第一話 江戸へ
第2話
徳川の将軍さんの正室、御台所として江戸へ上る。
西の田舎町で育った私には寝耳に水の話だった。
父上からそう聞かされて数日、取って付けたような祝いの宴に見送られ、私は籠に乗せられた。
詳細は知らないが、家の為なのだと思い、自分を納得させている。
武家の娘として、亡くした母に代わり幼い弟を見守りながら、何かの際には父上を支えるつもりで、学問や武芸にも打ち込んできた。
力は弱いが、諸国や地方勢力と結び付きの深い我が家、幕府との繋がりが深まることでお互いの得にでもなるのか。
私なりに家の行く末を考えてきたつもりだったが、所詮は女の身だったという事に打ち拉がれた。
身に余る名誉、そうなのだろう。
しかしこの虚しさは何なのだろうか。
男同然に育った私ではあるが、好いた人もいた。
「こんな事になるのなら、罪になろうと俺のものにしてしまえば良かった」
そう言って私を抱き締めた大和とも、もう会うことはないのだろう。
今となっては、何もなくて良かったのかもしれない。
聞けば顔も知らぬ将軍、徳川家飛殿は病がちでまだお子もないとか。
さらに御台所が立て続けに亡くなったばかりだそうで、だから丈夫が取り柄の私に白羽の矢が立ったのか。
どちらにしても正室だの側室だの、女の情念が渦巻く大奥。
正直恐ろしい。
が、これが私に与えられた運命なのなら受け入れよう。
どんな未来が待ち構えていようと。
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