第9話

 いつもの朝。

 裕介を見送り家事を済ませ、美奈子は近所のスーパーで買い物を終えるとポストを開いた。


「あ、真知子と岡崎君の招待状が届いた」


 友人の真知子と岡崎の結婚披露宴の招待状だった。

 真知子と岡崎は、美奈子の小学生の時からの古い友人で、美奈子の結婚式にも真知子は来てくれていた。



 やっと岡崎君と結婚するんだね。

 くっついたり別れたりを繰り返してたけど。

 良かったね、真知子。



 友人の幸せな知らせに、美奈子も久しぶりに心が温まる。


「今日ね、真知子から披露宴の招待状が届いたの」


 夕食の席で美奈子は裕介に伝えた。


「あー、小学校の時からの友達だったよね。結婚するって言ってたね」


 美奈子の嬉しそうな顔に裕介も笑顔になる。


「新しい洋服、買ったらまずい?」


「良いよ。買いなよ。でもあまり目立つような洋服はやめろよ。美奈子は美人だから新郎側の男にジロジロ見られるの嫌だから」


 クスクス笑いながら言う裕介。


「もうッ!大丈夫だもん!」


 楽しい夕食の会話。冗談でも嫉妬してくれて美人だと褒めてくれる裕介。

 十分幸せだと思っても、美奈子の中に納得できないことがどうしてもある。

 毎晩遅い夕飯。

 お風呂から上がれば裕介はすぐに寝てしまう。

 満たされない夜を過ごす辛さ。

 美奈子は笑顔の裏で、今夜も枕に涙を落とすのだった。

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