第248話アルトリウスの父、カインの幽霊がやってきた
「……」
フィリアちゃんとファルスさんの結婚式の翌日目を覚まして棺桶を開けて体を起こす。
『愛し子様。我が息子の妻よ、お目覚めかな?』
「ヴァー⁈」
真正面に知らぬ男性がいた、いや幽霊がいた。
思わず絶叫する。
黒髪に赤い目の吸血鬼っぽいの幽霊!
壮年の男性っぽい幽霊がいる!
誰だこの方!
「どうした梢、何だ噂をしたらやってきたでは無いか」
「コズエどうした? そこに何もいないぞ?」
「コズエ……何かぼやけていますが、なにかいるのですね?」
「コズエ様、どうなされました」
どうやら見えているのは私とクロウだけ。
アインさんはぼんやり、アルトリウスさんとティリオさんは見えてない。
「こうすれば見えるだろうな」
クロウが指をパチンと鳴らした。
「おや」
「誰ですか⁈」
「ち、父上⁈」
「「「父上⁈」」」
思わずアインさんとティリオさんとハモってしまう。
だって、アルトリウスさんにあんまり似てないもん!
失礼だけど!
『お初にお目にかかります、愛し子様。私はカイン・ミストリア。アルトリウスの父でリサの夫です』
と、頭を下げられた。
私も頭を下げて、
「あ、どうも。アルトリウスさんの妻の梢です」
『知っております』
知ってるんだ。
そういやクロウとシルヴィーナが私が結婚するまでいたって言ってたもんね。
「アルトリウスさんにはいつもお世話になっております……」
『息子が貴方の支えになっているようなら何よりです』
「な、何故今頃?」
アルトリウスさんがめっちゃ混乱してる。
まぁ気持ちは分からなくもない。
『それは、愛し子様が「会った事無いなー一回くらい見たかった」と思った為、ネロ神様とデミトリアス神様に行ってくるように言われたのだ』
「なるほど、では──」
『あ、リサには会わんぞ』
「何故⁈」
アルトリウスさん大声を上げている。
『何故って、生きて合流するって約束破ってしまったのだぞ、私は。会わせる顔がない』
「でも……」
『リサにビンタされそうだし……結構痛いのだぞ、リサのビンタは?』
ビンタかい。
ずるっと滑りそうになった。
「お母様、お父様、その方は誰ですか?」
「幽霊みたいだね」
「幽霊みたいじゃなくて幽霊なの、きっと!」
おや、子ども等はバッチリ見えているみたいね。
ちょっとびっくり。
「この方はね、アルトリウスのお父様なの」
「お祖父様だ!」
「僕らのお祖父様!」
「お祖父様、お祖父様!」
子どもらはキャッキャと笑いながらアルトリウスさんのお父様──カインさんに触れている。
あ、触れるんだ。
「コズエ様、昨日頂いたリンゴでパイを──」
リサさんがカゴの中にパイを入れ、布で覆って持ってきた。
が、カインさんの顔を見てカゴを落とした。
『り、リサ、えーっとその、な?』
「貴方のばかぁあああああ!」
バチーン‼‼‼
『ごふっ!』
めっちゃいい音なったな、と言うか吹っ飛んだぞカインさん。
あ、幽霊だから軽いのか。
「カイン! 何で死んだのよ! 無理はしない! 死にそうになったら逃げるって言ったじゃ無い! なのにどうして……!」
あー、リサさん泣いちゃったよ。
アルトリウスさんうろたえているし。
子ども達はリサさんの頭撫でてるし、私はどうすりゃいいの。
「ち、父上、御無事ですか?」
あ、アルトリウスさんが吹っ飛ばされて倒れてるカインさんを起こした。
『いたたた……だから会うのが怖かったんだ! 怒ったリサは怖いから本当!』
「でも、原因父上にありますよね?」
『うぐ』
「母上のおっしゃる通りでしたよね」
『ぐぅ』
ぐぅの音しかでないのか。
まぁ、そんな約束しちゃったのに死んじゃったんだものね。
「お祖母様大丈夫ー?」
「痛いところがあるのですかー?」
「お祖父ちゃんそんなに悪いことしたのー?」
ぐすぐすと顔を覆って泣くリサさん、私はリサさんの肩を抱き寄せる。
「カインさん、死んじゃったことちゃんと謝罪してくださいよー。約束破っちゃったんですからー」
『う、うむ。り、リサ、すまん。死んでしまって……』
「ぐす……どうして、逃げなかったの?」
『いや、逃げようとしたのだが……ニンニクの粉を周囲にばらまかれて霧になれずコウモリになって飛んで逃げようとした所を銀の矢で射貫かれて……死んだ』
イブリス聖王国のイブリス教徒マジ卑怯だな。まぁ聖王国の連中は滅びをたどってるからどうでもいいけどね!
『あれが無ければ逃げられたんだ……』
「……ひっく」
『リサ、すまない約束を破ってしまい』
「……でも、側にいてはくれないのでしょう? 貴方は霊、私は生者」
『……そうだな』
「もし、もし生まれ変わったら今度こそ、私を看取って頂戴、お願いよ」
『……ああ、勿論だ』
二人は抱き合った。
『愛し子様、息子と、リサを我が妻とよろしく頼む』
「勿論です」
そういうとリサさんから離れてアルトリウスさんのところに行き頭を撫でた。
『アルトリウス、リサを大切にな。そして己の妻も』
「分かって下ります、父上」
『では、どうか私の家族をお願いします』
そう言ってカインさんの姿は消えた。
「あるべき場所に帰ったのだろう」
「そうなんですね」
神様ーお願いしますよ、どうかカインさんとリサさんの生まれ変わりが幸せになりますように、結ばれますように。
『うむ、その願い、聞き届けた』
オウフ⁈
神様、いきなり声をだすのはびっくりするので一息置いてください!
スマホとかあるでしょう⁈
『いや、こっちの方が早いと思ってな』
さよですか。
とか、そんなことを考えているとリサさんは慌ててカゴを見ていた、そして安堵の息を吐いていた。
「良かったパイは崩れてなかったわ」
気にしなくていいのに。
そのあと、私達は皆でリサさんのパイを食べました。
子ども達は嬉しそうにもぐもぐ食べていた。
私は一切れ貰って、神様に頼んでカインさんにお供えしてもらうことに。
死んだ今なら食べられるらしいので。
カインさん、泣いて喜んでいたって。
今まで妻の手料理を食べられなかったからだって。
なら良かったと思いつつ、私は部屋を出た。
部屋を出ると子ども達はまだ食べ足りない様子だった。
なので私もリンゴのパイを作ってあげた。
クラフト能力使いつつ。
子ども達は嬉しそうに食べてくれて、私は幸せな気分にひたった──
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