第247話フィリアとファルスの結婚式~天から舞い降りてきたのは~



 フィリアちゃんとファルスさんの結婚式が始まった。


 その前にガネーシア王国で何かあったらしいが、お陰で聖女フィリアちゃんは始祖の森で暮らし、エンシェントドラゴンの庇護を受けて暮らすと新国王、元王弟兼公爵様が決めたらしいこと以外わからない。

 処分とかどうなったのかは知らない、知りたくも無い。


 結婚式は滞りなく終わり、二人は誓いの指輪を交換しあった。

 ガネーシア王国は指輪を交換し合う結婚式らしいね。

 さて、それでは宴の為に二人に着替えて貰い宴が始まる。

 メインは巨大なケーキ。


「わぁ! 綺麗! 美味しそう!」


 どうやらガネーシア王国では巨大なお菓子か、フルーツを食べさせあいをするらしい、そのあと、分けて食べるそうだ。


 まずファルスさんが切り分けてフォークを刺してフィリアちゃんに食べさせた。

 フィリアちゃんは美味しそうに食べる。

 食べ終わると、フィリアちゃんも切り取ってフォークにさしてファルスさんに食べさせていた。

 少し大きいけどファルスさんはケーキを食べた。


 私はケーキを切り分けて皆に配り、そして杯をとる。


「この良き日の結婚に乾杯!」

「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」



 お酒を飲めない子はジュース、吸血鬼の方々はブラッドワイン。

 各種族の為に作られた料理を皆堪能していく。


 アンドリューさんはむせびなきながらジュースを飲んでいた。

「ファルスは、妹が死んでから結婚のけの文字も無かったから、こうして聖女、いやフィリアと結婚できたことを心底幸せに思う……」

 とかなんとか言いながらジュースを飲んでいた。

 場酔いするのか?

 この人。


 そっか、ファルスさんが神官になったのは妹さんがなくなったからなんだ。

 だから、フィリアちゃんを最初は妹のように思って死なせないよう逃げて来たんだ。


 まぁ、今はそういうのは無くてフィリアちゃんはファルスさんのお嫁さんになった訳だからいいよね妹さん?


『うん、ふぁるすおにいちゃんがせいじょさまのおむこさんならすてきだもの、わたししゅくふくするわ!』


 幼い女の子声が私の耳に届いたのでぎょっとする。

「どうした、コズエ?」

「い、いや、なんでもないねぇ、女の子の声聞こえなかった?」

「いや……」

「聞こえませんでしたよ」

「ええ……」


 誰も、何か聞こえたような仕草はしていない。

 クロウを除いて──


「梢、どうした」

「クロウ、何か声──」

「聞こえたぞ、アレは死者の声だ」

「……やっぱり? でもなんで」


 ひそひそと会話をする。


「神々がお前の思ったことに答えさせるためだけに来させたのだ」

「なるほど」


 神様お墨付きの会話ね、なるほど。


「目をこらせ、耳をすますせろ。さすれば聞こえるぞ、見えるぞ」

「う、うん」


 私は言われた通りにしてみる。


 すると、ファルスさんと同じ髪色の小さな女の子がフィリアちゃんとファルスさんの周囲をぐるぐる回っていた。


『うふふ、すてきで、かわいいせいじょさま、おにいさまにぴったり!』

『おにいさまも、こんなにかっこよくなったのね、いきてじまんしたかったなぁ』


 などなど褒める言葉を言ってからアンドリューさんの所に。


『アンドリューおにいさま、きょうはすっごいじょうちょふあんてい!』

『でもおさけはのんでない、えらいね。ぱぱとままみたくならなくてえらいね』

『ぱぱとままのせいでわたしはしんじゃったもん』


 え?

 パパとママのせいで死んじゃった?

 どういうこと?


 女の子の幽霊は私達の元へやって来た。

『きいているわ、えんしぇんとどらごんさま、いとしごさま。わたしはせふぃ・あんねりーぜです』

『うむ、我はクロウだ』

『梢です。ど、どうもよろしく……』


 クロウを真似て特殊な声──念話で会話する。


『あの、パパとママの所為で死んじゃったって……』

『ぱぱとままはセフィがものごころつくころにはおさけにいぞんしてて、いつでもおさけをのんで、おにいちゃんたちのかせぎもおさけにしてたの……』

『……』

『あるひ、ぱぱとままがわたしのことをじゃまだといって、けったりなぐったりしてわたしはそれでしんじゃったの』


 結構辛い話だ、と思った。


『わたしがしんじゃったのをきっかけに、おにいちゃんたちはきょうかいにはいって、こどもたちのほごにいそしむようになったの』

『なるほど、じゃあフィリアちゃんもその流れでファルスさんに保護されたのね』

『そうだとおもう』


 幽霊の女の子──セフィちゃんは笑う。


『おにいちゃんたちにしあわせになってってつたえてね! わたしおにいちゃんたちはうらんでないよ、ぱぱとままはうらんでるけど!』


 そう言って消えてしまった。

 空の向こうへ。


「……」


 私はどうしようかと考えていた。

 するとクロウが立ち上がってファルスさんに何か──いやセフィちゃんの言ったことを伝えていた。

 ファルスさんの目が見開かれる。


「ほんとう、です、か?」

「うむ、お前達には幸せになって欲しいと言って天へと帰還したぞ」

「セフィ……」

「せふぃってファルスさまのいもうとさんだよね、ファルスさま」

「ええ、ええ、守れなかった事を恨んでいたと思っていましたが、そうではなかったのですね……」

「だから、今度こそ、約束を守れ。フィリアを幸せにしろ」

「はい、勿論です」


 ファルスさんは涙を拭った。


 同じように、アンドリューさんに話をすると号泣した。

 そして何度も頷かれた。


「必ず、幸せになるとも」


 そう言っていた。





 式が終わり、私達は家に帰った。

「コズエ様、何かあったんですか? クロウ様と誰かと話しているような……」

「あ、それねぇ」

 私は事情を説明した。

「霊体もといゴーストですか……」

「未練があってきたんじゃなくてコズエが呼んだから神様に言われて来たと思われるからゴーストではないのでは?」

「でも、分類的にはゴーストが近いですね」


 極東的には幽霊、こっちではゴースト。


 まぁどっちにしろ、未練はなく天にいたところを私の願いで来たのだから別に問題はないだろう。


「……」

「アルトリウスさん?」

「父上は、いなかったのだろうか」


 あー確かに、気になるな。


 なのでクロウの言えに行くとシルヴィーナさんもいた。


「アルトリウスの父親らしき霊? ああ、見たぞというか大分長い事この森にとどまっていたぞ」

「え、私見えてなかったんだけど」

「それはコズエ様がその時幽霊を見ようとしてなかったからです、見ようという意思があれば見られました」

「マジかー……いつ頃までいた?」

「コズエ様達が結婚されるまでですね」

「そんな長く。悪霊にならないの?」

「このもりは常に浄化され続けている、だから悪霊にはならん」

「なるほど……ところでなんで教えてくれなかったの?」


「神々曰く、お前は相当なビビりだと聞いた」

「クロウ様からそのように」

「うぐ」


 否定できない。

 私はビビりだ。

 びっくり系統はダメだし、驚かされるのも苦手だ。


「あの男、わりとお茶目だからビビりなお前には見せられんと思ってな」

「ユーモアがあると言えば可愛いんですが」

「はははは……」

「だが、アルトリウスの父親は、アルトリウスが結婚し、妻も安心に年を重ねられると知って満足して召されたぞ」

「そっか、ならいいや」


 あったことはないけど、安心してくれたならいいか。

 でも一回くらい見たかったなぁ──





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