第200話10年目の夏の一日~梢の思う事~





 夏は王族関係の方々との交流の季節。

 最初はドミナス王国メインでムーラン王国はオマケだったけど、今度はどっちも重要になると言われた。

 それはそうだろう、現正妃様と現側妃様、今はきてないが王太子と王太子妃達との交流があるドミナス王国。

 ムーラン王国は王太子と王太子妃との交流になった。


 魔族とも夏場は交易が盛んだ。

 秋もだけど。


 春から秋にかけて交易などを行い、冬はあまり行わない、緊急事態の場合は行うとしているが、今のところない。


 ちょっと王族の方々と交流が大変だけど、レーヴさんとレイヴンさんがやってくれるから一安心。

 シルヴィーナもやってくれるから更に安心。


 私は畑仕事と子育てに集中できるが、ちょっと罪悪感が湧く。

 シルヴィーナの子どもも、まだ小さいし、レーヴさんとレイヴンさんの所のこの森で生まれた元い神様の加護による出産ラッシュで生まれた子達はまだまだ小さい。

 なのに、お仕事を任せている、うーん……


 本当に良いものか……



『向こうが率先してやっとるんじゃから気にする必要なかろうて』


 久しぶりにおじいちゃんなクロウを会話してなんかしっくりこない。


「でもさー子どもの時期って大切だよー? 親が関わらないとのちのちコミュニケーションとか反抗期でめっちゃ苦労するとおもうよー?」

『まぁ一理あるの』

「でしょう?」


 私はため息をつく。


「もし、これで反抗期とかコミュニケーションで問題起きたら私の所為確定だよ」

『まーそんなに悲観的にならんでもよいんじゃないかの?』

「皆に責められたら私森出る」

『ぎょえ⁈』


 クロウが奇声を発した。

 何故発したか分からない。


『梢お前さんはここに居るんじゃ、良いな?』

「え、う、うん」


 そう言ってクロウはいつもの姿になり、屋敷から出て行った。


「うーん?」


 首をかしげて椅子に座っていると、血相を変えたシルヴィーナ達が入って来た。

 何でだろう。


「コズエ様! 万が一反抗期で問題が起きましても我が家の問題ですので! コズエ様には一切責任はございません!」

「私の家も同じです! コズエ様には責任はございません!」

「シルヴィーナとレーヴの言う通りです! 私達の問題であって、コズエ様には一切関係はございません!」

「は、はい」


 必死な形相と声に思わずたじろぐ。


「ですからコズエ様! 森を出るなどおっしゃらないで下さい!」

「その通りですコズエ様!」

「お願い致しますコズエ様!」

「う、うん出ないよ、私森の中引きこもるから、今まで通りでいるから」


 そう言うと、安堵のため息を三人はついた。

 そして「コズエ様、本当お願いしますよ」と言って出て行った。


 しばらくするとクロウが戻ってきて、屋敷に収まるサイズのドラゴンの姿に戻る。

「あ、あのーめっちゃ血相変えたシルヴィーナとレイヴンさんとレーヴさんきたんだけど……」

『うむ、お前が言った言葉を三人にそのまんま・・・・・伝えたからのう』

「それであんなに血相変えるなんて……」

『それだけお主が森からでるとか言うのがヤバい案件じゃったんじゃよ』

「はぁ……」

『神様から言われている通り、お前さんは此処で森を開拓したりしてすろーらいふなるものをやっていけば良い』

「あ、うん」


 なんかしっくり来ない返事をして家に戻った。


「「「おいし! おいし!」」」


 家に入ると食堂で子ども達がフルーツゼリーを美味しそうに食べて居た。

 ぷるぷるの食感と沢山入ったフルーツの食感が合わさって気に入っているようだ、というか我が子達は食わず嫌いはあまりしない良い子だ。

 食べ物を投げるなんてしない。

 元の世界でひっくり返しても大丈夫な器をひっくり返そうとしてしびれを切らした赤ちゃんがその器を投げるという行動に出たりしたが、うちの子は器を投げることもしない。

 いやいや期も魔と言われる程のものでは無かったように思える。


「これも、私の子どもかつ精霊と妖精の愛し子だからかなぁ?」


 と呟くと精霊と妖精が──


『そうだよそうだよ!』

『愛し子様は知らないんだったねー』

『一つ覚えたねー』

『良かったねー!』


 とのんきに私の周囲に群がっている。

 若干うっとうしい、が。


「教えてくれてありがとう」


『えへへー!』

『褒められたー!』

『いえーい!』

『わーい!』


 教えてくれたお礼は言わねば成らぬ。

 私の性質として。

 精霊と妖精は嬉しそうに窓の外から飛んで行った。


「やれやれ」


 私は窓を閉める。

 空気の入れ換えをしていたら入って来たのだ、あの子達は。


「かーしゃま!」

「たべないの?」

「の?」


 ぼーっとしていると子ども達がフルーツゼリーを食べないのかと持ってきた。


「私の分は取っておいてあるからそれ全部食べていいのよ」


 と言うとぱぁっと顔を明るくして戻って行った。


「うちのおちびちゃん達か食いしん坊ね」


 そういう所が可愛いのだが。


「コズエ、軽食は取らなくていいのですか?」

「晩ご飯結構食べたから平気」


 アインさんの言葉に私はそう返す。


「あまり無理はしないでくださいよ」

「分かってるって」


 そう言って花畑エリアを見回る。


「……」


 菩提樹の木が大きくなっていた。

 実は結婚した時に植えたのだ。

 菩提樹にはそう言う花言葉があるから。


 私は菩提樹によりかかる。

 木の鼓動が聞こえるようだった。


 子ども達はどんな生を歩むのだろうか。

 できれば幸せな生を歩いて欲しいものだが、今の私には分からない──





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