第201話10年目の秋の一日




 夏の盛りは過ぎ、涼やかになっていき、秋の気配を感じる頃──


「さて、そろそろ帰らねばならぬな」

「ええ、そうねマリア。お父様とイリス姉様を宜しくね」

「イザベラ、そろそろ帰るよ」

「はい、ロラン様」


 イザベラちゃん達が帰る時期になった。


「また来るぞ」

「また来るわね!」


 そう言って王族の皆様は帰っていった。


「やっと静かになったな」


 クロウは疲れたように息を吐いた。


「白亜達に護衛して貰ってるけど大丈夫かな」

「大丈夫だろう、もし何かあったらこちらに責任を押しつけようとする愚か者達があぶり出されるだけだからな」

「……何もないと、いいなぁ」


 色んな意味で。

 どうか、何も起きませんように!


 その後戻って来た白亜達から何もなかった事を聞いて漸く安堵することができる私であった。

 そして──


『秋ですよー』

『秋ですよー!』


 季節の精霊と妖精、秋の精霊と妖精が飛び回ってた。

 葉っぱも色づいている。


「さて、収穫収穫」


 秋は実りの秋というだけあって比較収穫量が多い。

 だから動ける女性陣子ども等に頼んで収穫を手伝って貰っている。

 男性陣は狩りに出ている。

 今まで、なんでこの森の動物刈り尽くしちゃわないんだろうと思っていたら、どうやらこの森の動物は年がら冬以外繁殖期で多産で成長も早いらしい。

 それと、クロウが狩っていい大きさの森の動物を見繕って狩りをしていたらしい。

 結果狩りつくすということはなかった。


 冬以外繁殖期ってどんな動物なんだ。

 しかも出産も早いって始祖も森の加護かなんかか?

 とか聞いてみたら──


「正解だ」


 とだけ言われた。

 いや「正解だ」じゃないんだよー!

 トンデモ動物家畜にしている私が言うのもアレだけど、トンデモ動物ととんでもない森だな此処!

 お陰で食うに困らないけど!

 もう何でもいいや、畜生!


 とか、自棄になりつつ日々を過ごしていた。


「かーしゃまー!」

「かーしゃまー!」

「かしゃまー!」


 畑仕事をしていると、我が家のちびっ子達がどうしてか畑にやって来て私に向かって全力疾走している。

 しかもその通路には色々な作物が。


「あ゛──‼ ちょっと待ってー‼ 止まってー‼」


 と言っても止まってくれず、もう駄目だと思ったらひょいと三人を抱きかかえる人物が。


「やんちゃの度合いは低いがそれでもやんちゃか」

「クロウ!」


 クロウが三つ子達を抱っこしていた。

 子ども達は足をばたつかせている。


「やー!」

「や!」

「やー!」


 子ども達はクロウの抱っこを嫌がっている。


「晃に肇に音彩! 畑には来ちゃいけませんといったでしょう?」

「かしゃま!」

「かーしゃま!」

「かーしゃま!」


 私が抱っこすると嬉しそうに私にすり寄ってくる。


「何だ、我が不服か」


 クロウが不満げに言う。

 私はため息をつく。


「めったに抱っこしない人だからいやだっただけじゃないの?」

「なるほど一理ある」


 とは言っているものの不満そうなまま。


「分かった、これ終わったらスイートポテト作ってあげるから」

「言質とったぞ」

「はいはい」


 目に見えて機嫌が良くなったクロウにため息をつく。

 するとじゅるりと音が聞こえた。


「しゅいとぽてと……」

「たべちゃい……」

「しゅいとぽてと!」

「食いしんぼさんはここにもいましたか」


 私は苦笑して家に戻った。

 日中収穫できるのは他の皆にやって貰ってできないのを私がやってただけだから問題無いんだよね。





 家に着き、クロウ用のスイートポテトと、家族用にスイートポテトを作る。


「あ゛──疲れた。」

「しゅいとぽてとおいしい!」

「おいしー!」

「もぐもぐ」

「ティリオさん、悪いけど子ども達見てくれる、私はクロウにスイートポテト持って行くから」

「分かりました」


 少し疲れたように言う私に、ティリオさんは苦笑して返し、子ども達のお世話を始めた。

 私はクロウの屋敷に行き、食堂のテーブルに巨大なスイートポテトを渡した。


「おお!」

「ミルクと合わせて食べるといいよー」

「そうさせて貰おう」


 そう言ってナイフとフォークで食べ始めるクロウを置いて屋敷を出た。

 そして家に帰ろうとすると、アルトリウスさんとアインさんがやってきた。


「どうしたの二人とも、こんな時間に外にいて」

「星読みをしてたんですよ、梢。貴方の」

「……どうだった?」

「変わらず、といいますか」

「まぁ何かトラブルあるよりいいよね。アルトリウスさんは?」

「吸血鬼とダンピール達の相談役をしていた」

「それは大事ね」


 そう言って家に戻ると、半分おねむな三つ子達が食堂の椅子に座っていた。


「お腹いっぱいでおねむなの?」

「そのようで」


 パパ達三人で子ども達を運び、歯を子ども用のハーブ液で口をゆすがせて、吐き出させ、そのまま寝室の棺桶に横にする。

 すると夜だというのにすやすや眠り始めた。

 2時間くらいすれば起きるだろうなと思いながら子ども達の棺桶の蓋を閉める。


「こんな時間だけどスイートポテト作ったんだ、食べる?」

「頂こう」

「勿論です」

「有り難うございます」


 そう言って小さいスイートポテトと銀牛のホットミルクを堪能する。

 しばらく会話を楽しんでから、アインさんとティリオさんは夜遅くなったので眠るため、歯を磨いて寝室に向かい、ベッドで眠ってしまった。


 私とアルトリウスさんは子ども達が起きてくるまで談話をし、起きてきた子ども達のお世話をしながら、夜が開けるまで団らんを楽しんだ──





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