第7話行商とエンシェントドラゴン
「ところで、レイヴンさん達はどうやってこの子達を保護したんですか?」
子ども達が寝静まり、静かな夜に私は問いかけた。
「いえ、我が行商にはそういう探知の能力を持つものがいましてね、そして透過の魔法で見たら子どもばかりでこれは裏があると、襲って子ども達を強奪しました」
「だ、大丈夫なんですかそれ」
「王族の子もいらしたんでしょう? だったら確実にあの奴隷商人達は後々罰を受ける事になるので問題ありませんよ」
「へ、へぇ」
「それよりも、商売の話をしませんか?」
「いいですよー。じゃあこちらからイチゴ、サクランボ、葡萄のワインです」
五本ずつ提出する。
「では、一本失礼……」
レイヴンさんはくいっと飲み干した。
「おお、甘い、しかし美味い……! 王族に販売しても良いくらいの代物です!」
「ならよかったですーあ、そうだ。シルヴィーナさんから聞いてたのですが、ユグドラシルの葉っぱがご入り用で?」
「勿論買い取らせていただきます」
「じゃあ、一袋ドゾー」
私がアイテムボックスから一袋取り出すと、袋の中身をみて息を吐き出した。
「上物です。一袋100白金貨支払います」
「白金貨?」
「ええ、白金貨、大金貨、金貨、銀貨、銅貨と貨幣が分かれていますので」
「ほへー……」
白金貨って一番高いんだよね、どれくらいの価値なんだろう。
と思いつつ白金貨を貰い、ワインは初回限定価格で金貨5って言ったらひっくり返られた。
そんな代物じゃないですからと怒鳴られて白金貨60枚渡された。
そういや、鑑定してなかったけど、どんなもんなんだろう?
梢は知らない。
あのワイン達には梢の加護がたっぷりと注がれ、そして病気や老いすら打ち勝つ程の代物であることなど──
名前:御坂 梢
種族:吸血鬼、神の愛し子
加護:創造神と闇の神の加護(強大)
そんな状態であることを、彼女は知らずに過ごしている──
『なんか強い魔力をかんじるのぉ』
普段は大人しいエンシェントドラゴンが体を動かした。
『神の愛し子かの? ちょっとみてくるかの』
エンシェントドラゴンは飛び立ち各地で騒動を起こすのを神達しか知らない──
「ふぁああ」
夕方目を覚ます。
昨晩行商で色々買い物をした。
魔力コンロとか、魔力ストーブとか色々。
「さて、行商の人は帰ったみたいだし、畑仕事しようっと」
家から出る。
「そうだ、今日の朝飯何にしよう」
「こずえさま! 果実いっぱいとれました!」
「おお、ブラッドフルーツにブルーベリーにクランベリーも一杯。ジャムとジュースにしようかブルーベリーにクランベリーは」
「はい!」
私はメーカー小屋に行き、一部を残してブルーベリーとクランベリーはジュースメーカーと、ジャムメーカーにぶち込んだ。
ブラッドフルーツは全部酒造メーカーにぶち込んだ。
私あんまりいらないし。
そして、残りはみんなで分けて食べた。
「甘くって美味しい~~!」
「こずえさま、こずえさま、あそこのくだものもとっていいですか?」
「さくらんぼ? いいよ、でもくれぐれも落ちないようにね」
「はい!」
ルフェンは嬉々として木にするすると上ってサクランボを落とし、他の子達がざるで受け止めている。
「さて、趣味のアクセサリー作りでもしようか」
この世界に来る前の趣味のアクセサリー作りを開始する。
三つの石を選んで糸で編んだブレスレットを作る。
「イザベラちゃん、手を出して」
「わぁ、きれい……!」
「貴方にあげるわ。貴方を守ってくださるようにお祈りを込めたから」
「うん、ありがとう、こずえさま!」
「他のみんなの分もつくるからねー」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
子ども達は無邪気に喜んでくれた、嬉しい。
シルヴィーナは遠い目で見ていた。
イザベラという王女に与えられたブレスレット。それは──
ブレスレット:愛し子の加護(イザベラへの祈り)
悪意よけ、防護、幸運の守り (ランクEX)、効果壊れるまで
「……」
一体どれだけ強いお守りをつくってるのでしょう、梢様は──
たらりと汗を流した。
全員分のアクセサリー兼お守りを作って、みんなに持たせて、新しく作った家二軒に済ませてすやすや眠っているお時間。
私はユグドラシルの苗木を見に向かった。
「わぁお」
小さかった苗木は私の背丈を超える程生長していた。
「大きくなぁれ、大きく立派になぁれ」
そう言いながら私は水と肥料を与えた。
「今日もいい夜ねー」
居住区──もう村と呼べる単位になりつつあるそこ、影が覆う。
そして小さくなって、影は着地した。
壮年の黒い服の男性だ。
「ここに愛し子がいると──」
「はぁ」
男性はそう言ってマジマジ見た。
「これは驚いた、吸血鬼が愛し子なんぞ産まれて初めてだ」
「え⁈」
私の種族とか色々バレてる⁈
「しかし、始祖の森を開拓するとはなぁ」
「いやー、神様に許可だされたので」
「ユグドラシルの苗木が増えたようだな、この調子でいけば大樹レベルにはなるだろう」
「は、はぁ」
どこまで分かってんだこの人、というかこの人誰⁈
「我か、我はエンシェントドラゴンのクロウだ宜しくな、梢」
「え、どゆことですか」
「愛し子がどういう行動を取るか興味が湧いた、儂──我も此処に棲む」
「ええええ⁈」
どうしよ、家作らなきゃならないじゃん!
私は慌ててクラフトをし、大きな家を作った。
『おお、ありがたいのぉ』
ん?
お祖父ちゃんしゃべりになってるぞ?
とか思ってたらクロウは小さなドラゴンになった。
『という訳でよろしくの、梢』
のそのそと動きながら家に入っていった。
「なんかとんでもない生き物たちが今後来そう!」
私は嫌な予感に頭を抱えた。
『ほほーフェンリルの群れの一つがこっちにむかっておるの』
クロウはモニターのような映像と地図を見ながらしゃべっていた。
『そこそこ強いフェンリルじゃしな、どうなることやらのぉ……それにしても』
『あんな強大な力を持ってるとは末恐ろしい愛し子じゃ、喧嘩したら儂でも負けるかもしれんの』
クロウはそう言うと毛布にくるまりすやすやと眠り始めた。
翌日クロウの予想どおりの事が起き、梢が頭を抱えることとなる──
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