第23話
が、そんな願いも空しく。
「スズ」
名前を呼ばれてしまった。無視しても別にいいと思うわけだ。ほら、よくあるじゃん。妹がお兄ちゃんの言葉を無視するとか、そういうの。私達だって兄妹だ。そういうことをしたっていいと思うわけよ。
だから、私だってここで乱さんを無視したってーーー…いいわけない。そんなこと何を妥協しても、それだけは無理だ。私の命が危ない。
「ナンデショウカ、オニイサマ」
「スズ、お兄ちゃんでいい」
ーーー…いや、そういうのいらないと思うわけだよ、私。
もう何でもいいから早く要件言って、私を唯一の癒しという部屋に行かせてはくれないだろうか?盛りだくさんの願いを込めて彼を見つめるが、今の乱さんに私の想いが通じるほど、聡いわけがなかった。
「ご飯は食べたのか?」
「そ、外で済ませてきました」
「そうか…」
沈んだ顔をしている彼を見て、まさか一緒に食べたかった、とか抜かすのではないかと踏んだのだが、それを彼の口から聞こえてはこなかった。よかった、乱さんと2人で食事なんて身が持たない。むしろ、息が詰まりすぎてご飯が喉を通るわけがなかった。
安堵して今度こそ部屋に戻ろうとしたのだが、まだまだ乱さんの質問攻撃は続く。
「宿題は終わったのか?」
「え?」
「宿題を忘れて先生を困らせたらダメだぞ」
ーーー…お前が言うな。
声を大にして言いたい。毎日毎日、誰よりも先生を困らせているはずのあなたが言う権利はないはずだ。
しかしそんなことを私が言えるはずもなく、『はい』と大人しく従っている私を誰かが褒めて欲しい。しかも乱さんはそれに満足したのか
「俺、今お兄ちゃんっぽいだろ?」
ドヤ顔で告げる。
……乱さん、それを言いたかっただけですよね。
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