おやすみのキスなんて、聞いたことありません
第22話
「……も、もう一度言ってもらえますか?郁世さん」
学校から帰った後、郁世さんが旅行の準備をしていたので嫌な予感がして聞いてみたのだ。
『旅行に行くの?』と。
そしたら、何と返ってきたと思う?ねえ、思う?
『違うわよ。これは夏来さんの所について行こうと思ってね!私、海外赴任することになったの』
と、こういうことになったわけだ。これはもう、もう一度聞くしかないよね。ね、ないよね?
「もう、風鈴ちゃんってば。可愛いわね。私は夏来さんのところに行くことになったから、乱のことよろしくね!」
よろしくしたくねえよ!!!!と言いたくても、言えるはずもない。だからと言って、このまま私と乱さんを2人きりにされても困る。
どうにかこの状況を打破しようと色々と考えていると、いつの間にか後ろにいた乱さんが親指を立てた。
「スズのことは任せろ」
お前は入ってくんじゃねえ!!!話、ややこしくなんだよー!!!
と心の中で叫んでも意味はない。そりゃ、そうだ。郁世さんは乱さんの肩に手を置いて『変な虫につかれないように、見張ってるのよ』とか何とか言っている。
いや、だからね。私、いいとは一言も言ってないというかね。私のいないところで話を進めないで。
「じゃあ、まだ荷物を詰めないといけないから、さっさとお風呂に入って寝るのよ。2人共!」
嵐のように去って行った郁世さんの背中を見つめ、気まずくなったリビング。……とりあえず、私はここから去ろう。とにかく、乱さんと2人きりというこの状況は避けたい。
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