第16話

「伴藤さん、俺の妹を威嚇するな。どんと、たっち、みー」



「そりゃあ、触るなって意味じゃなかったか?」



「……しっし」



英語が思い浮かばなかったのだろう。乱さんは私に抱き着いて、バンドウアオを追い払おうと手を振り回す。一方の彼は呆れて物も言えないような顔をしていたけど。……が、しかし、それよりも私は彼に抱き着かれていること自体が怖すぎて、固まっていた。




「箱入りちゃーん」



「む、和。スズを見るな」



「え?それは横暴だよ、乱。俺だって、箱入りちゃんを見てたい」



「駄目だ」



何を言い合っているのかさえ、もう耳に入って来ない。何とか彼の腕を抜け出したい。それだけを考えていると、授業が始まる予鈴が鳴った。



―――…チャンス!!



「わ、わたくし!じゅ、授業に出てまいりますので、これにて失礼します!!」



「スズ、授業に出るのか?」



「ええ!はい!」



『それ、同じ言葉だよ?』なんてタダアイに突っ込まれた。今はそんなことを気にしている場合じゃないんだ。外野は黙っていて欲しい。




「……そうか。じゃあ、俺も出る」



「あ?」



「え?」



何故かそれに驚くバンドウアオとタダアイ。え?今、驚くところあった?別に普通のことを言ったんじゃないの?




「……おい、何か血迷ったか?轟」



「俺も授業、出る」



「……乱、何か悪い物でも食べたの?」



「む、お前ら失礼だぞ。俺だって授業くらい出る」



「嘘吐け。今まで体育以外、授業なんてまともに出てるとこ見たことねえぞ、俺は」

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