第7話

次に何を言うのか、またはされるのかという恐怖に駆られている私に轟乱は下を向いてわなわなと震え始めた。



も、もも、もしかしてっ!私が彼に何か不快なことをやってしまったのだろうか!?殴られる!?焼きいれられる!?最悪、殺されちゃうの!?



表情が見えない彼が恐ろし過ぎて、声もかけられない。そして彼がばっと顔を上げた瞬間、私は何が降りかかってくるのか怖くて目を閉じた。―――…が。






「夏来(ナツキ)さん、このクソババアと結婚してくれてサンキュな。お陰でこんなに愛くるしい妹ができた」



「ははは、乱くんは相変わらず面白いなぁ」



「ちょっと、乱!テメエ、母親に向かってババアとは何だ!ババアとは!」



「あ?十分ババアだろうが」



言い合いを始める轟親子。そしてそれを優しく見守っている父。……さらにそれを呆然と見つめている私。



え?何?乱さんは怒っているんじゃなかったの?今、彼の口から私のことを『愛くるしい妹』とか聞こえて―――…はっ、まさか聞き間違い!?『憎たらしい妹』と聞き間違えたの、私!?



自分の耳を疑い始めている私に近づいてきた乱さん。あまりの身長差に震えている私をきっと捕獲対象とみなしているのだろう。大きな手が顔に近づいてくる。



ま、ま、まさか顔を掴まれて、食べられる!?ひいいいいいい!!!!




「俺の妹。俺だけの、妹」



が、しかし。顔を掴みに来たわけではなくて、頭をがしがしと撫でてきた。ああ、撫でたかったのね。確かに私の頭の高さ的に撫でやすい位置にあるよね。私は怖いけど。とっても威圧的で怖いけど。

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