第13話

まさる その子は北斗の“女の子”ってことか


蒼   そりゃ、“沙耶”なんだから女だろ。


陽向  はぁ。蒼には分かんないか。


蒼   何がだよ!


まさる おこちゃまはだまってて。









頼   ごめん。つい…ここで言うことじゃ

    なかったよな。


北斗  いや、べつに…


頼   でも思ったんだ。いつも北斗がひと   

    りでカウンターで飲んでるとき。す  

    げえ寂しそうだから。なにか抱えて

    るものがあるのかって。それに…。


北斗  それに、両親はいないし、

    素性もよくわからないってとこ?


陽向  どういうこと…?


北斗  俺、親死んでんだわ。

    地元じゃ有名で。黙っててすまん。

    芸名だと佐伯だしな。

    本名は冴島北斗。 

    事務所には言ってある。一応な。   







蒼   でもさ、北斗。過去は過去だろ。

    前を見てる今のお前はだれよりも       

    強い。

    

北斗  ありがとな。蒼。









男の友情は揺るがない

そう思えた一瞬だった

仲間は信じていよう

たとえ裏切られても

まあいいかと笑えるくらいに

信じあって未来を生きていこう

そう決めた










蒼   それにしても、会ってみたい。

    北斗の心を揺さぶる存在を。

    ただ会ってみたい…。


北斗  ははは。それは無理だな。

    どこにいるのかなんてわからない。












蒼は手を椅子の肘掛けに大げさにかけ

足を開き大きく上を向いて笑った




蒼   そんなのわかんねえじゃん。

    本当に運命の相手なら会えるさ。

    神様は馬鹿じゃない。

    きっと会える。会わせてくれる。


まさる さすが、純ボーイ!! 











北斗は彼の言葉に戸惑った









もし会えたなら何がしたい?

何を聞きたい?

何に笑いあいたい?


なにも思いつかない











それほどに現実味がなかった




会えるわけもない






そんな資格もない











彼女が生きているのかさえ分からない







ただ一つ確実に言えること







それは、想いはずっとくすぐったままということ





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