だが古麻の方は、どうも呑気そうに考えてる稚沙を見て、声を少しばかり張り上げていう。

「もう、稚沙ったら。そもそも椋毘登が相手を稚沙一人だけにするっていっていたの？大体そんな呑気に考えてばかりいたら、本当に彼を別の娘に取られるわよ！」

　それを聞いた稚沙は酷く衝撃を受ける。

　ただでさえ、日頃から余り色気もなく幼く見られがちな自分だ。そんな自分では、いずれ椋毘登に飽きられるなんてこともあり得るのではないか。

　また古麻のいうように、椋毘登は初めから相手を稚沙一人に絞る気がないなんてことであれば、それは大問題である。

「そんなのやだー！椋毘登が私以外の人の元に行くなんて……」

「だったら、彼に嫌われないようもっと努力なさい！」

　古麻は自身のいいたいことがやっと伝えられて、ほっと胸を撫で下ろした。

「わ、分かった古麻。私頑張る。もっと努力して、魅力的な女性になるわ」

　稚沙は拳をぎゅーと握りしめて、そういった。

「まぁ、でもまずは椋毘登本人に聞いた方が良いんじゃない？彼が実際にどう考えているかは、私たちでは分からないもの」

「そ、そうよね。椋毘登に本当のところを聞いて、それから改善策を考えた方が好都合だし」

「まぁ、稚沙にしては真っ当な考えね。じゃあ頑張ってごらんなさい。私で協力出来ることはしてあげるから」

「こ、古麻〜！」

　そういってから稚沙は、思いっきり古麻に抱き付いた。そしてとても嬉しかったのだろう。半分泣きそうな声で『やっぱり古麻だけが頼りよ～』とか、『私本当に頑張るね！』等思いつく限りの言葉を彼女に浴びせる。

　だがこれでは、稚沙が椋毘登に捨てられるのを前提に話を進めている感じがして、古麻は少しいいすぎてしまったかと思った。だがこれも彼女の為である。ここは少し心を鬼にして、見守ろう。

「じゃあ、稚沙もそろそろ自分の仕事に戻りなさい。いつまでもここにいたら、仕事をサボってると思われて、大目玉を喰らうわよ」

　古麻にそういわれたので、稚沙はすっと彼女に抱きつくのをやめた。

「うん、分かったそうする。古麻、今日は話を聞いてくれて本当にありがとう。じゃあ私行くね！」

　稚沙はそういってから、にっこりと笑い、そのまま「古麻、またねー」といいながら、その場を走って離れていった。

　その場に取り残された古麻は、大きくため息をつく。

「はぁー、やっと稚沙が帰っていったわね。あの2人あれで似た物同士だから、まぁ上手く収まるでしょう」

　そういって古麻自身も、やれやれといった感じで仕事場へと戻っていった。

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