第77話

そして数日後、今日は糠手姫皇女ぬかでひめのひめみこ小墾田宮おはりだのみやに来られる日である。


稚沙ちさが宮の中を歩いて移動していると、何人かの集団が歩いてきているのが見えた。そしてそんな彼らは、どうやら大殿おおどろへと向かっているようだ。


そしてその中には、10代ぐらいの少女が1人いるのも見える。


「あ、もしかしてあの人が糠手姫皇女?何とも綺麗な皇女ね」


その少女は色白で、とてもか弱い感じの女性に稚沙は見えた。

自分がもし皇子の立場なら、確かに妃にしたいと考えるだろう。


それぐらい本当に美しい皇女で、稚沙もそんな彼女に思わず見入ってしまった。


(きっとこれから、炊屋姫かしきやひめ様の元に行ってお話をされるのね)


稚沙はその話しがとても気になるが、呼ばれもしていない自分がその場にいく訳にはいかない。


(うーん、やっぱりちょっと気になる)


そんな時である。

1人の女官が彼女に声を掛けてきた。


「稚沙、ちょっと悪いけど。炊屋姫様が、今日届いた木簡を見たいそうなの。持って行って貰える?」


(え、今から?)


炊屋姫はこれから糠手姫皇女と話をするはずだ。それなのに木簡も一緒に読むつもりなのだろうか。


「でも今日は糠手姫皇女が会いに来られてるのに、大丈夫なんですか?」


「えぇ、何でも急いで読みたいらしいわ。糠手姫皇女とは少し話をするだけだから、構わないそうよ」


彼女はそれを聞いて思った。

それなら炊屋姫に木簡を渡したのち、大殿の外に隠れて2人の話を聞けないものかと。


「分かりました。では急いで炊屋姫の元に木簡を持って行ってきますー!」


彼女はそういうと、大急ぎで一旦木簡を取りに倉庫に行き、そのまま大殿へと向かった。

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