第14話
翌朝、
結局の所、どうして彼が突如倒れたのか、その原因は不明なままである。
「お父様の容体が落ち着いたのは本当に良かったけど、どうして今回こんな事になったのかしら……」
そんな父の事を思っていると、ふと韓媛は、先日彼から受け取った短剣を思い出した。
「確かあの剣は、災いごとを断ち切る剣と呼ばれてたのよね」
その事を思い出した彼女は、その剣を取ってきて、鞘から取り出した。
剣自体は少し古そうだが、とても作りの良い物に見える。素材ももしかしたら、この時代では珍しい鉄かもしれない。
「ふーん、やはり見た目は普通の短剣ね。でも災いごとを断ち切る意味があると言うのなら、儀式か何かで使われていたのかしら?」
韓媛は軽くその剣を振ってみた。やはり剣の割りに比較的軽く、これなら自身の着ている服の中に忍ばせても大丈夫そうだ。
(これだけ軽いと、護身用としても申し分ない剣ね)
「この剣で本当に災いごとを断ち切れるのなら、どうかお父様を守って……」
韓媛は両手で剣を握り、思わず目をつぶって祈った。
すると何故だか、剣が少し熱くなってきた感じがする。
韓媛が変だなと思っていると、急に彼女の脳裏に、不思議な光景が見えた。
「ここは、この家の食料や物資がおいてある部屋だわ」
彼女がその光景を見ていると、その部屋に1人の男性がいた。彼はお酒の中に何か薬のような物を入れている。
(あの人は、どうやらお父様の従兄弟の
「よし、これで準備は出来た。これぐらいの量で大丈夫だろう。この酒は円個人の物だから、本人が飲んで数日後には毒が回って反応が出てくるはずだ。
それにもしこの毒がバレたとしても、大和にあった毒だから、最悪大和に濡れ衣を着せれば良い。
まぁ、そうなると真っ先に疑われるのは、最近ここに来ている
(これは一体どういう事なの……まさか能吐は、お父様を狙って今回の事を行ったというの)
円の従兄弟にあたる
「まぁ、体が不自由になるだけで、命までは失くならないだろう。そうなれば、葛城の実権は俺が握れる可能性が十分に出てくる」
韓媛はその話しを聞いてゾッとした。これは彼女の父である葛城円を失脚させるために、能吐が考えたことのようだ。
「そうすると、お父様は今後体が不自由になって、葛城の実権を握れなくなってしまう。しかも、もし毒の事が知られたら、その濡れ衣を大泊瀬皇子に着せようとまで考えている……」
そう思うと、韓媛はふつふつと怒りが込み上げてきた。こんな事は絶対に許される事ではない。能吐はそこまでして、葛城の実権を握りたいのだろうか。
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