第12話

雄朝津間皇子おあさづまのおうじ瑞歯別大王みずはわけのおおきみの部屋を後にして、自分のいる宮に戻るべく馬小屋に向かった。


「兄上のやつ本当に勝手だよな。会うだけならまだしも、相手の姫をこちらに向かわせる手配までしていたなんて……」


確か忍坂姫おしさかのひめは自分よりも3つ下だったはずだ。とすると今は15歳ぐらいになっている。

確かに小さい頃しか会ってないので、そんな彼女がどんな娘に成長しているかは全く分からない。


「凄いおしとやかな娘に成長しているとは、流石に考えずらいよな。確か妹もいて、妹の方は割りと可愛い感じだったのは覚えてる。どうせなら妹の方だったら良かったのに」


(これはもう、諦めて会うしかないな……)



そして歩いていると、彼は馬小屋にたどり着いた。

そこにいる見張り人から馬を受け取り、さっと馬に股がった。


(とりあえず、宮に早く帰るとするか)


「じゃぁ、俺は戻るとする。コイツの面倒有り難う」


そう皇子が言うと、見張り人の男が彼に歩み寄って来た。


「はい、雄朝津間皇子。帰りの道中お気をつけて!」


それから彼は自身の宮に戻るべく馬を走らせた。


(そう言えば、俺の宮付近で盗賊が出てるって話しがあったな。今日は一人だから用心して帰らないと)


こうして雄朝津間皇子は自分の宮へと戻って行ったのだった。

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