第11話

「本当にこの件に関しては、勝手に進めて悪いとは思ってる。だがこれもお前の為を思って了承したんだ」


そう言って瑞歯別大王みずはわけのおおきみ雄朝津間皇子おあさづまのおうじに頭を下げた。いくら兄でも相手は大王だ。そんな大王に頭を下げさせるのは流石に悪い気がする。


「もう、分かったよ。その忍坂姫おしさかのひめに会えば良いんだろ。多分断る事になると思うけど……」


彼は仕方なく諦める事にした。

それに大王も自分の事を思っての事だと言うのは理解した。

それで会ってみて嫌なら断れば良いだけの話しだ。そこまで困る事でもない。


「そうか、納得してくれるか。これが雄朝津間にとって良い縁談になる事を期待している」


瑞歯別大王は、何とか雄朝津間皇子に了解を貰えて一安心といった所だ。


「ところでお前、皇太子をやってみる気にはなったか?」


(そっちの話しまで押し付ける気か)


「それは断じてお断りします!」


そう言って彼は「じゃあ、俺はこれで失礼します」と言って部屋を出ていった。



そんな彼の後ろ姿を見た瑞歯別大王は、「ふぅーやれやれだ」と言ってその場で手を伸ばした。


「俺が今の妃と出会ったのは、16、17歳ぐらいの時だったな。雄朝津間もそろそろ大事な娘を見つけられると良いが。それが俺なりのせめてもの償いだからな」


大王は、自分が今の弟皇子ぐらいの時の事をふと思い返していた。

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