第7話
「お母様、只今戻りました。お話しって何でしょう?」
忍坂姫はそう言って百師木姫のいる部屋の中に入っていった。
部屋の中では百師木姫がゆったりとくつろいでいた。
「あぁ、忍坂姫戻って来たのね。私の横に来て座りない」
百師木姫にそう言われたので、彼女はそのまま母親の横にひょこっと座った。
(さてと、一体お母様は私に何の話しをするつもりだろう)
「忍坂姫、実は今日お父様とも話してたんだけど。そろそろあなたの嫁ぎ先を決めたいと思ってるの」
「え、私の嫁ぎ先ですか?」
彼女も既に婚姻する対象の年齢になっている。
それに心配性の父親の事だ、きっと色々候補を考えていたのだろう。
「えぇ、それでね。その相手に、今の大王の弟ぎみの
(雄朝津間皇子?あぁ、小さい頃1度会って遊んだ事がある男の子だ)
忍坂姫はふと昔の事を思い出した。顔は余り覚えて無いが、確か自分より数歳年上で、割りと優しい感じの男の子だった記憶がある。
「へぇー雄朝津間皇子ね。何となくしか覚えてない……」
(まぁ、身分的には釣り合いは取れてるし、お父様が考えてもおかしくはない相手ね)
「それで、お父様がこれから
(うーん、もうずっと会ってない子の元に突然嫁げと言われてもね。でもそれ以前に、まだ大王や雄朝津間皇子にもこの件話してないのよね)
忍坂姫はその場で「うーん、うーん」と唸っていた。
「忍坂姫、私はとても良い縁談だと思うわ。皇子はあなたと歳も近いし」
百師木姫はそう彼女に告げた。ただ、だからといって強制的に話しを勧めるのは乗り気がしてなかった。
「お母様、私も一応は皇女です。だから嫁ぎ先もある程度は親が決めるのは仕方ない事と思ってます。ただやっぱり出来れば嫁ぐ前に相手の事を色々と知って、その上で決めたいわ」
それを聞いた百師木姫は思いのほか驚いた。
「あらやだ。あなたの事だから、もっと大反対するかと思ってたのに……」
「お母様、私だって皇族としての自覚ぐらいあります」
(もう、本当に私を何だと思ってるのよ)
忍坂姫は母の意外な反応に、ちょっとムスっとした。
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