第84話

「人間の悩みってさ、全て対人関係らしいよ」



徐に立ち上がりながら、カナメが言った。



「なにそれ」


「アドラーが言ってた」


「誰それ」



そう尋ねると、有名な心理学者だと教えてくれた。




「もしそれが本当だとしたらさ、俺たちはいつも自分のことで悩んでるようで、実は他人のことで悩んでるってことだよな。そりゃ、生きづらいわけだ」




薄ら笑いを浮かべ


「じゃあ寝るわ」と部屋に戻る彼を、私はただ眺めていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る