第80話

「カナメにとって天国ってどんな世界?」



彼の横顔を眺めながら何気なく尋ねた。


天国ねぇ、と口を尖らせて考えるように彼は目を伏せる。



「心が孤独じゃない世界かな」



カナメの口からそんな言葉が飛び出すとは思わず、少し驚いてしまった。



私と違って彼はいじめを受けているわけでもなく、学校を歩けば羨望の眼差しを向けられ、友達だって多いわけではないだろうが、いないわけではない。


そんな彼が孤独じゃない世界を天国に例えたことが予想外だった。




「心の孤独ってさ、どうやったら補えるんだろう」



呟くように彼が言った。

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