第78話

「いや、あんまり映らなかった」[



肩にフェイスタオルを引っ掛けたまま、カナメは隣に腰を下ろし私と同じように空を見上げる。



「じゃあ、自分で描くしかないな」



彼を見ると、指先で筆を動かすような素振りをして私を見つめていた。



「絵の醍醐味だろ、見えないものを描くって」



そう言われて私は再び空を見上げた。世界各国から夢を叶えるために人が集まる東京。


そんな光り輝く東京では見えなくなってしまった星たち。


星だけじゃない、光り輝く街の代償に陰を濃くした人々の孤独。


そんなものを私はこの手で描くことが出来るだろうか。



その答えはカナメが以前に、もうすでに口にしていた。

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