第77話



風呂上りに民宿の庭に置かれたベンチに腰掛け、夜空を見上げると東京では決して見ることの出来ない満天の星々が瞬いていた。


浜風が心地よく濡れた髪を乾かし、静かな夜に波と名も知らない虫たちが音色を奏でている。



スマホを取り出し、星空に向けてシャッターを切る。


しかしスマホのカメラでは肉眼で見えるほど星を映す事は出来なかった。



「それ、映るの?」



振り返ると、風呂から戻ってきたらしいカナメが部屋の窓を開けてこちらに出てきていた。



開いた窓から柔らかな微かに三振の音が聞こえてくる。


宿泊客へおばあが食堂で弾き語っているのだ。



さっきちらっと通ったけれど、同じく宿泊している大人たちが陽気にこぞって酒を酌み交わしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る