第63話
思わず私は持っていたアイスをカナメに預け、周囲の人たちと同じようにスマホを取り出しカメラを構えた。
「写真、撮ってどうすんの」
そんな私の背中に向かってカナメが言った。
「どうするって、どうもしないけどただの思い出じゃん」
「どうせ死ぬのに?」
そう言われ、喉の奥がひゅっと狭まって、言葉もなかった。
初めての飛行機、初めての石垣島、初めて見る美しい景色につい舞い上がっていたとはいえ、ついうっかり忘れていた。
私たちは近くで記念撮影をする観光客たちとは違うのだ。
これは思い出作りの旅行なんかじゃなく、人生の精算の旅なのだから。
どうせ死ぬのに思い出の写真なんて残しておいて何になるのだろう。
9月がくればもう二度と見返すことなんてないのに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます