第47話

ただ上手ければいいというだけの世界ではない。



上手いのは当然とされた中でどう自分の個性を生み出すのか。



そしてその世界観が自分以外の多くの人々に支持されて初めてお金になる。


私の描く絵にはとてもそんな価値はない。




「そんなの、やってみなきゃわからないじゃん」



カナメはいつもの如く都合のいい解釈をして答える。


なぜ、私の絵をどこかに出品し、夏中買い手が見つからない、という現実とわざわざ向き合わなければならないのか。



それこそ、どうせ死ぬのだから放っておいて欲しい。



「いいよ、死ぬのに傷つきたくないし」



私が目を逸らして呟くと、カナメは少し黙ってから、



「まあ七海が嫌なら、無理にしないけどさ。とりあえず三十万あれば、美味い飯食べて、二人でどっか遠く行くくらい出来るでしょ」と言った。

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