第一章
第1話
プロローグ
東京の人は冷たい。
渋谷スクランブル交差点を一望できるカフェの窓際で行き交う人々を見下ろしながら、
ふと誰かが言っていた言葉を思い出した。
信号が変わるたび、どこからともなく押し寄せる人波は途切れることを知らない。
その中の一人がこの世からいなくなったところで、誰も気づきはしないだろう。
人が多ければ多いほど、心は孤独になる。
だから都会にいると、心は孤独になって人にも冷たくなる。
まさに負のループだ。
人は誰しもが独りだと思い知らされる。
一人で生きて、一人で死んでいく。
誰も特別なんかじゃない。私は特別なんかじゃない。
駅からとめどなく交差点に流れ込んでくる人々の数だけ、代わりがいる。
誰かが死んでも、次の瞬間にはそれを補うようにどこかで誰かが生まれる。
だから死にたい人は死ねばいい。
ただ、迷惑はかけるな。
賑わうホームから線路へ飛び出した自殺者に、
ある人は悲鳴をあげ、
ある人は直ちにSNSを開き、
ある人は舌打ちをする。
同情する人などいない。
この世界はそういう所だ。
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