第327話

「いや……何かさぁ…立ち入るつもりはなかったんだけど、


響輔の兄貴、リコちゃんに何か話したそうだったし……それもリコちゃんにとってあんま良くないっぽかったし…」


進藤先輩は時々、鋭い。


「やだなー、そんな大した話なんてしてませんよ~!」


あたしは泣きそうになっていた顔を無理やり笑顔に変えて先輩に笑いかけた。


だけど



「嘘だ」



先輩は低く言って、あたしのすぐ近くまで歩いてくる。頭上に上った太陽が作り出した影があたしをまるまるすっぽり包み込むように隠すと、


「泣けばいいじゃん」


と小さく言った。



え―――……?



「泣いちゃえばいいじゃん。


辛いときぐらい泣けばいいんだよ!」


先輩の語尾はちょっと強めだった。


でも怒ってる、って感じではない。前は……こんなに進藤先輩と親しくなる前は、この人の一言一言が怖かったケド、でも今は―――


あたしのことを心配してくれてるのが分かる。


「リコちゃんは頑張った。


俺、リコちゃんが頑張ってるとこいっぱい知ってる」


そう、先輩の言う通り、あたしは一回響輔さんにフラれても、めげずに、みっともないぐらいしつこく付きまとってた。


「それでも変えられないものはある」進藤先輩が言い



それは



人の気持ちですか―――?




と聞きたかった。けれど聞けなかった。


今はただ、何も聞かずともただ、受け止めてくれる人に傍に居てほしい。


「先輩……胸貸してください」


そう言って


トン


あたしは先輩の胸元に頭を置くと、声を押し殺して


泣いた。



先輩はあたしが泣いてるところを人に気づかれないように


あたしの頭を抱えて隠してくれた。



傍に居てくれたのが先輩で




良かった。


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