序章

第1話

…しなければ、良かった?


彼女が死んでから、夢を見る。

     "直人、ドライブに行こう"

そう言った彼女が振り向き、微笑む姿が見えて、夢から覚める。

ハアハァと荒い息を吐き、上半身を起こす。

キィー…ンと頭が痛くなる。

重い体を引きずり、身支度をする。

これが彼女が死んでからの日課だった。

世界がモノクロで、何をしても楽しくなく、何を食べても味がしなかった。


"私が願いを叶えてあげようか?、青年"


あいつの手を掴まなければ良かったのかは、今はもう、分からない。ーーいや、そもそも。

俺が酒を飲まなければ。

俺が運転しなければ。

ドライブに誘わなければ。

ーー彼女と付き合わなければ。

こんな事には、ならなかったかも知れない。

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