本編

第2話

第1話:異世界転生は突然に


「…様、リズお嬢様!」

「……はっっ!!」

私、菱川 愛実は誰かに呼ばれる声で、目を覚ました。

悪い悪い夢を見ていた。

隼人くんとデート中、信号無視の車に2人轢かれて…それで…

「…死んだ…はずなのに…」

信じられなくて、手を見つめる。

「…死んだ?何を仰っているのですか?」

後ろから声がして振り向くとメイドの格好をした、見知らぬ年配の女性が立っていた。

知らないのは、人だけでなかった。

部屋はまるでお姫様が使うような、きらびやかな部屋。

タンスはどこを見てもつやがあり、ベッドは遠くから見てもふかふかそうだ。

目の前にある化粧台の鏡も、一片の曇りもない。

鏡の中の私も、桃色の瞳と髪で、愛らしい顔立ちをしている。

来ている服はドレス。

しかも。昔の貴族が着ていそうなコルセット付きの豪奢なもの。

(…ま、まさか…)

いやな予感がして、メイドに尋ねる。

「……あの、ここはどこですか?」

「……?ここはウィングランド王国、そのお城ですよ。」

ひゅつと息をのむ。

「…なぜここへ?」

「王子との結婚剥奪の儀を行う予定でしょう」

背中に悪寒が走る。

「これは夢……」

「夢ではございません。いい加減、現実を見てくださいな。」

それ以上は有無を言わせないとでもいうように、メイドは無言で私(リズというらしい)の髪を結い始める。

だらだらと冷や汗が流れる。

つまり…これは…

(俗に言う『異世界転生』ってやつですか…?)

菱川愛実、どうやら今から婚約破棄するお姫様に転生したみたいです。

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