第31話


教室に入る頃には、メガネは腕を放してくれたけど、それまで無言で廊下を歩いていた。



その横顔がちょっとピリピリしているように見えたのは、あたしの気のせいだろうか。



何ていうの?怒ってる風にも見えるし、悲しんでいるようにも見える。



こういうのどっかで見た。



あ。



そうだ。



うちの廊下に飾ってある般若の能面!



あれにそっくりだ。






何だよ、この般若野郎……







「おはよ~」



あたしは自分の机に鞄を置いて隣の席にいる千里に声をかけた。



「おはよ♪朔羅」



千里は朝から元気そう。



くっそぅ、肌つやとかが羨ましいぜ。



なんて考えてると、



「龍崎さん?1年のときB組だったよね?俺、D組だったの。和田アツシって言うんだ。ヨロシクね」



と後ろの席のヤツが声をかけてきた。



ちなみに始業式の席順とは替わってる。あのときの席順は適当だったから千里が近くに居たけど。



千里の方が良かった。



和田と名乗ったのは、黒縁メガネの爽やか男子だ。



命名:今日からお前はメガネ2号だ!




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