第47話

さっきバッグを投げ捨てた拍子に財布の中から飛び出してしまったのだろう。



「ああ、ありがとう」



バッグの中から財布を取り出し、それをしまおうとした時、私は財布の一番奥側のカードケース入れから少し顔を出していた1枚の紙に目を止めた。




私はハッとしてそれを取り出し開いてみると、随分の年月が経ち、よれよれになってはいるものの、それはまぎれもなくさっき過去の将暉から受け取ったあのメモだった。



少し字は消えかけてはいるが、彼の電話番号とメールアドレスが読み取れる字で書かれている。


これを財布に入れたのは私だった。




私はこのメモを受け取った後なんとなく財布にしまい込んでいて、そして将暉と別れた後、財布を買い替えようとした時にすっかり忘れていたこのメモを見つけ、けれど捨てる気にもなれずになんとなくお守り代わりとして別れた後もずっと歴代の財布の中に忍ばせ続けていたのだ。




後で一度このメモの番号に電話をかけてみた事があったけれど、そのときにはすでにこの番号は彼へと繋がる事はなかった。

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