第3話

そんなある日



僕は倉本先輩に頼まれていた書類の統計に悪戦苦闘中、定時になってどんどん退社する社員たちを見送りながら一人黙々と書類作成に掛かっていた。倉本先輩は外回りで確か直帰だった筈だが、約束の21時までに彼女のPCにメールを送るよう言いつけられている。



ヤバっ!あと二十分もない!



あせあせとPCに向かっていると



「あら、遠藤くん。まだ残ってたの?」



と、予想外の倉本先輩の声が聞こえて僕はキーボードを走らせる手を休めて顔を上げた。



慌てて時計を確認すると20:47



「す、すみませ!急いでやりますね!」と再びキーボードに向かおうとすると



倉本先輩は小さくため息。



ああ、僕は倉本先輩から言付けられたことすら出来ないでいる。彼女の隣にビジネスパートナーとして並べるのは一体いつなんだろう。



と、自分に嫌気を覚えていると



「ちょうど良かった。呑みに行かない?その書類、クライアントが急いでないって言ってたから、明日に回しても大丈夫だから」



突如として現れた、僕にとってはラブアクシデントに目を瞬いていると



「行くの?行かないの?」と倉本先輩が腰に手を当ててせっかちに言う。



「い、行きます!」僕は慌てて席を立った。



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