シンデレラとガラスの靴……もとい、牛丼??

第1話

「ダメ……こんな時間に…しかもこんな所で」



‐女の声が照明を落とした薄暗い室内に静かに響いた

今からひどく背徳的なことをしようとしている、自分が恐ろしくなったのかもしれない。



「誰も見てやしないよ。大丈夫」



 ‐男が意味深に笑って女に微笑む



「……でも、こうゆうのやっぱりよくないわ」



‐女はなおも躊躇したようにその手を空中に彷徨わせていた



「大丈夫だって。早く食べたいな」



‐男がねだるような視線を女に向け、女はそこでようやく決心がいったように、彷徨わせていた手をその場所へそっと……






「てか何!その意味深なモノローグはぁ!!



単に牛丼食うだけだろ!」




と、私は声を荒げ目の前でどこかこの状況を楽しんでる、元同僚を睨んだ。けれど差し出された割り箸をすでに割っていた私。



「こんな時間にこんな高カロリーのものを食うって酷く背徳的だろ?」



と、どこかこの状況を楽しむように元同僚の、伊原 隆いはら たかしはにやりと口の端に笑みを浮かべる。



伊原は高級ブランド靴店の店長、私はウェディングドレス店の店長。前は同じ百貨店で働いていた仲間だが、今回は靴とドレスの店がコラボして展示会と即売会を開催していた最終日。



照明を落とした室内に、売れ残ったドレスと靴がまだ残り半分と言うところで飾られている。残り半分はすでに片付け済みだ。



靴は簡単に片付けられるけれど、ドレスはそうゆうわけにはいかない。何せ一着20キロ近くもあるのだから、これ一着を片付けるのだけで相当な時間が掛かる。



若いスタッフたちを先に帰して一人で残ったドレスを片付けていたところ、差し入れと言うことで伊原が牛丼を買って来てくれた。



 気づいたら、日を超えそうな時間帯に、こんな高カロリーは確かに背徳的だ。




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