第37話
私も環に微笑み返して鞄を受け取り、会長が壊した扉へと向かう。
環は見送りには来ないのか、ヒラヒラと手を振ってソファに腰を下ろしていた。
私は破壊された入り口を出て階段を降りる。
どうやら宮元先輩が案内してくれるらしく、私の前を歩いて行く。
廊下や階段には双葉の生徒と思われる人達が、倒れていたり、辛うじて起き上がってはいるけれど、顔を顰めている人ばかり。
私の知らない死闘が繰り広げられていたことがよく分かる光景。
そんな人達を横切って私達は外へ出る。
どうやら私が監禁されていた場所はプレハブ小屋だったらしい。
プレハブ小屋にしては大規模な……。
そして、双葉の校内だったらしい。
まさか学校内に不良の溜まり場があるとは……。
学校の先生達は撤去したりしないのだろうか。
使われていない校舎裏のプレハブ小屋なんて、撤去してしまえば良いのに。
そしたら溜まり場なんて無くなるわ。
私は別に良いけどね。
双葉の教師陣は不良校と言う事に誇りを持っているのかもしれないし?
「もー!礼奈ちゃん、心配したんだからねー!!」
「感情を波立たせてしまったのなら申し訳ございません、天里君」
「違うよー!!……危ないんだからね?…工藤と仲良くなったみたいだけど、清華とか条翔だったら洒落になんないんだからね!!」
「環も同じ事言ってましたよ?」
不良達からも恐れられるって、どんな学校なんでしょう?
それにしても清華と条翔はいったいどんな方々が通っていらっしゃるのでしょうか。
そこまで言われると興味が湧いてきますね。
「……それも…不満!!何で工藤のことは呼び捨てで、僕の事は君付けなのー!?」
本当に子供みたいですね。
「……環は環でしょう?」
何となく工藤呼びは似合わないじゃない。
本人から下の名前でいいって許可を貰ってるし♪
「僕だって結だよー!!」
「……そうですか」
親しく見えると女子生徒からの嫌がらせが悪化しそうなので、名前呼びはご遠慮致します。
「ゆ・い・!!呼んでみて!!」
「嫌です」
どうしてそこまでして名前を呼ばせたいのでしょうか。
苗字も下の名前も大して変わらないじゃないですか。
「何で何で!!いいじゃん!!」
……駄々っ子でしょうか。
そろそろ相手するのが面倒臭くなってきました。
「……待って…!!お姫様っ………!!」
天里君の相手をするのに飽きてきた時、後ろから誰かが走って来た。
振り返ると私に薬品を使った小柄な男の子が、身に覚えのあるエコバッグを片手に息を少し乱して立っていた。
「お姫様呼び、辞めてくれるかしら?」
「…あ、すみません。……あ、コレ!忘れ物です。冷蔵庫に入れていたので、傷んでいたりはしないと思いますよ」
差し出されたのはエコバッグ。
中には私が昨日スーパーで買った品々が入っている。
どうやらちゃんと保管して置いてくれたらしい。
「ありがとう」
忘れていたわ。
「…いえ」
ペコリの頭を下げて彼は、少し戸惑い気味に来た道を引き返していく。
何故なら私に差し出した筈のエコバッグを、当たり前のように会長が受け取ったから。
私も驚いてる。
ただ、表情に出ないだけ……。
「……会長、自分で持ちます」
「気にするな」
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