第36話


「そうですね。…私は貴方方と仲良しごっこをする気は無いですけど。理紗が何を企んでいても」



理紗は理紗だ。

良くも悪くも。

自分が思うまま自由気ままにふらふらと。

あの子が望む未来を叶えてあげる気は毛頭ないけど。



「俺達は変わらない。落としてみせるよ、礼奈?」

「それは楽しみですね。……ただ、勘違いしないでくださいね?私は貴方方が嫌いなわけではありません。興味が無いだけです」



興味が湧かないだけ。

全員、何かを諦めたような瞳をしているこの人達に。


酷く残酷な言葉。

嫌いならいいのだ。だってその人のことを認識しているからこそ、嫌うのだもの。

でも、興味が無いは。

認識さえされていない。

何者であろうと関係無い。

赤の他人と言ってるようなもの。

実際その通りだけど。



「……そうか」

「はい」

「…帰るか」

「そうですね」



温度の無い会話が終われば、会長の口から出てくるのは、帰ろうという言葉。

会長の言葉を受けて頷く。

明らかに一緒に帰る流れに、環が呆れたような表情を浮かべる。



「…仲が良いんだか、悪いんだか、分かんねぇな。お前ら」

「ふふ、良くも悪くも無くてよ」



言ったでしょう。

興味が無いだけだと。

それだけよ?



「………へぇ?」

「環は好きよ♪」



環はね。

付かず離れず、距離感がちょうど良いわ。



「…俺、紫蘭の奴らに殺されねぇ?」



……環はいったいなんの心配をしているの?

殺すなんて物騒な事、目の前の生徒会役員達がするわけ無いでしょう。

そもそも人を殺せるタマじゃ無いでしょうから。



「大丈夫よ?殺されそうになったら守ってあげる♪」

「それは…それで複雑……」

「危険があったら連絡してね?飛んで行くわ」



すぐ駆けつけられる距離ならね。

遠かったら少しお時間頂くわ。



「それは俺、情けなくね?」

「そんな事無いわよ」



私が変わり種過ぎるだけよ。



「…そうか?」

「そうよ。情けなくても好きだけど♪」



環が環なら好きよ。


死にたくないと思うのは人間の本能。

助けを縋るのは当たり前。情けないなんて思わないわ。



「…礼奈、言葉には気をつけような?俺、めちゃくちゃ紫蘭の奴らに睨まれてるからな、今」

「貴方が私を呼び捨ての時点でアウトよ」



今更過ぎるでしょう。

私が気に入って話し掛ける環と、興味の範囲外の会長達じゃ、ねぇ。

私と仲良くなりたいらしい会長達からしたら面白くないわよね。

私と環の仲の良さが。

出会ってたった1日しか経っていないのに、と。



「……マジか」



私も最初から環呼びだしね。

会長達は苗字なのにね。



「じゃ、私帰るから。またね、環♪」



諦めて睨まれ続けるといいわよ。

睨まれてるだけなんだからいいじゃない。



「おう。気ぃつけて帰れよ。また連絡するわ」

「絶対よ?連絡来なかったら双葉に押し掛けるからね?」

「ん。分かった」



ぽむぽむと私の頭に手を乗せて環は笑う。


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