第27話

❄️礼奈❄️



熱を出してから数日。


理紗から聞いたのか、私の連絡先を入手したらしい会長達から、毎日のように心配のメールや電話。

挙句の果てには家に行くとまで言われて、全然休まらない日々を送っている。

断れば文句を言われて非常に面倒臭い。

相手をするのも面倒臭いのに、返信しないと天里君あたりから、鬼電掛かってくるから油断出来ない。

あの人達は本当に心配しておるのだろうか?

寧ろ嫌がらせのレベルなんだけど……。特に、天里君が。

それから理紗、人の携帯番号を勝手に他人に教えないで欲しい。


そんなに心配しなくてもただの風邪。

微熱が続くせいで学校を休んでいるだけだ。

私がそんな事を言ったところで、心配する人は心配する。

会長からは大人しく家にいるなら、詮索はしないと言ってもらえた。


私が大人しく家にいる筈も無いんだけどね……。

今、私は勝手に行きつけのスーパーに来ている。

もう、帰るところだけど。


別に一人で出歩いたところで何かあるわけじゃないし。

皆心配し過ぎなのよ。

流石にぶっ倒れたりしないよ?



「……あの」



そんな事を考えながらスーパーを出たら、よく分からないフードを被った男の子に声を掛けられた。

見た目からして同年代。



「…はい」



男は何やら自分の携帯の画面と私を何度か見比べる。

何をしているのかは知らないが、用がないなら声を掛けないで欲しい。



「…コレ、君だよね?」



ズイッと目の前に携帯の画面を突きつけられる。

画面に写っていたのは会長に横抱きにされた私。

…うん。確かに私だ。

これは…熱出した時の写真かな。



「……そうですね」



どうして彼がこんな写真を持っているのか知らないけど。

何とも薄気味悪いので破棄してもらえないだろうか。

明らかに盗撮だし。

そもそもその写真を見せられても私には、自分が写っている事しか分からないわ。



「………やった♪やっぱり、紫蘭しらんのお姫様なんだ!」



………。

コイツは何を言っているのかしら?

私は紫蘭の姫じゃないわ。



「…人違いじゃないかしら?」



私は姫じゃ無いわ。

確かに私が通っている学校は、紫蘭高等学校だけれど。



「いやいやいや、この写真の人物どう見てもアンタじゃん!!」



それはそうだけど…。

どうしてそれだけで私が姫になるのよ!!



「……他人の空似じゃない?」

「いや、違うでしょ!!」



…本当に何なのよ。

面倒臭いわね。

これ以上、姫だとか姫じゃないとか、くだらない押し問答は続けたくないわ。



「……私が姫だとして、何のご用?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る