第3話

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❄️礼奈❄️



桜の花びらが散り落ち、若葉が芽吹く頃。新しい学校に入学した。


長ったらしい来賓や校長の挨拶を聞くとも無しに、聞き流していれば入学式は終わった。

あっという間に終わった入学式は私の記憶には既に残っていなかった。



この学校では入学式の後に、生徒会役員選挙を行うことになっている。

入学式自体は午前中に終わるのに、生徒会役員選挙が午後からだから、仕方無しに親友と教室で昼食をとっている。

正直に私の気持ちを言っていいのなら、……どうでもいいから、帰りたい。

それだけである。


選挙の参加資格は男子生徒のみ、全学年強制参加。

投票者は女子生徒。


そのルールのせいか生徒会役員は毎年顔立ちの整った人物が当選するのだとか。

そんな適当な人選で生徒会役員など務まるのかは不思議だが、これまで大した問題が起こらなかったからこそ、この学校独自のルールが根付いているのだろう。


更に生徒会役員には授業免除の特典が付き、テストで赤点さえ取らなければ授業に出なくて良いとか。


女子生徒が生徒会役員になるには、副会長になるしか無い。ただし副会長になるには、生徒会長の指名が必要がある。簡単に言うならば、副会長を決める権利を持つのが生徒会長のみということ。別に生徒会長が決めれば男女関係無く副会長にはなれるらしいが、恋人と同じ空間にいたいと願う歴代の生徒会長が多かった為、副会長=生徒会長の恋人という方程式が当たり前に生徒間で浸透して現在に至る。


授業免除の特典は魅力的だけど、わざわざ敵は作ってまで生徒会役員になりたいとは思わない。



「…帰りたい」

「我慢しようかぁ?一応、メインイベントよ?」


私の呟きを拾った親友の理紗りさが苦笑する。


黒髪ストレートの艶のある髪の毛は肩の上で切り揃えられ、ひんやりとした涼やかな顔立ちのクール系女子。

中学からの悪友であり、高校でも奇跡的に同じクラスになれた。



「生徒会役員選挙なんて、興味が無いわ」

「え〜?楽しもうよ♪この学校イケメン率高いんだよ!!」



楽しそうに笑う理紗には申し訳無いけれど、男子生徒がイケメンだろうが、そうで無かろうが、興味は無い。

眼の前にいる理沙にしたって、生徒会役員選挙に興味がある訳では無い。遊ぶ感覚で楽しんでいるだけのこと。



「………面倒臭い」



ブツブツと文句を言ったところで帰れるわけでは無いけれど。



暫くして生徒会役員選挙の準備が出来たとアナウンスがあり、ぞろぞろと教室を出て体育館へと向かう。

午前中には居なかった生徒達がぞろぞろと体育館へと入って行くのが見える。2,3年生だろう。


……帰りたい。人多い。

バックレたい。切実に。


ま、理紗に腕を引っ張られている私には、逃亡する事は叶わないのだけれど。

元気良く歩いて体育館に足を踏み入れる理紗と、出来ることなら今すぐ踵を返したい私。

気がついたら投票用紙を手渡している先生の前まで、連れて来られていたけれど。



「お!お前らか。この紙に番号書いて、出口の箱に入れろよ」



投票用紙を差し出してきたのは、今日の入学式で担任と紹介された真島ましま先生。

スラックスにシャツという格好の30代くらいの男性。

……教室に居ないと思ったら、こんなところに居たのね。

会ったばかりの担任に顔を覚えられるような事は、していないと思うけれど……。


まだ目立つような事はして無いよ?



「はぁ〜♡イケメンっ♪」



るんるんとスキップでも始めそうな軽い足取りで、女子生徒の群れの中へと消えて行く理紗。

そんな理紗を手を振りながら見送っていると、真島先生が私を見ていることに気がついて視線を向ける。



「…なんですか?」

北見きたみは見に行かないのか?」

「人多いじゃないですか。…私は先生が私達の事を認識していることに驚きました」

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