第92話

「私はついでかい」



風香が苦笑いを浮かべながらツッコミを入れて、



「ま、いいけどね。あとは若いおふたりで」



そんな年寄りくさいことを言いながら席を立つ。



「ふーちゃん?」



「私は先に帰るから。朝倉くん、ミヤちゃんのことお願いね」



「はい! 任せてください!」



風香に頼まれたことが余程に嬉しかったのか、伊吹はキリッと表情を引き締めて頷いた。



そして、風香が教室を出ていってから、



「朝倉くん、これ。例の……」



都古が、テーマパークのキャラクターのイラストが沢山描かれた袋に入れられたお土産を、伊吹にそっと差し出す。



「ありがとうございます!」



早速袋を開け、



「都古先輩と南先輩も、同じものを?」



「うん、私とふーちゃんももう鞄に付けたよ」



テーマパークのメインキャラクターのマスコットキーホルダーがぶら下がった都古の鞄を見て、伊吹もすぐに自分の通学鞄に取り付けた。



「ずっと大事にします!」



とても嬉しそうに笑う伊吹を見て、都古も腹を決める。



「あの、ね、朝倉くん」



「嫌です」



伊吹は何故か急に真顔になり、首を横に振った。



「まだ何も言ってない」



「聞かなくても分かりますよ。僕のこと、はっきりとフるおつもりなんでしょう? 今はまだ聞きたくないです」

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