第89話
その割にはしっかりと言い当てられている部分もあるのが腹立たしいが、
「残念だけど。慰めてもらう相手くらい、自分で選ぶわ」
「えっ。もしかして、私がその選ばれし者!? キャー、照れちゃう!」
都古に手首を掴まれたままの風香が、何やら嬉しそうな黄色い悲鳴を上げていて楽しそうなので、結果オーライだ。
「え……市川さんって、まさかそっち……!?」
……あらぬ誤解を招いたようだが、これはこれで言い寄ってくる男子が減ってくれそうなので、もう反論せずに流れに身を任せることにする。
きっと、噂話とはこうして作られていくのだろう。
「そーよ! 今は私がミヤちゃんのこと狙ってるんだから、邪魔しないでよねー!」
風香はこの状況を面白がっているようで、都古とは別の理由で反論せず。
それどころか、何故かノリノリだ。
「そっか……市川さんってイケメンよりも美少女が好きだったんだ……」
そしてすっかり信じ込んだ男子生徒は、あからさまに肩を落として、とぼとぼと都古たちから離れていった。
彼の姿が、道行く人たちの波に消えていったのを見届けてから、都古が風香の手をそっと離す。
「次に校内で
呆れたように溜息をつくと、
「それ聞いた朝倉くんはソッコー女装して登校して来そう」
風香が真顔でぼそりと呟いた。
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