第13話

「もう、ミヤちゃんたら。彼はミヤちゃんだからアピールしてるんでしょ!」



「そうですよ!」



帰国子女である伊吹がこの学校に馴染んでいるのはいいことだとは思うが、変なところで風香と意気投合しないで欲しい。



「わざわざそんなことしなくても、幼なじみなんだから朝倉くんのことはよく知ってるし」



今更、一体都古に彼の何を知れというのか。



……が、



「……へぇ。都古先輩は、僕の何をよく知ってくれてるんですか?」



初めて見る伊吹の表情に、もしかすると会えなかったこの六年間の間に彼は随分と変わってしまったのかもしれないと感じざるを得なくて。



都古の瞳を真っ直ぐに覗き込んでくる伊吹は、年下とは思えないほどの色気をまとっていて――



「……とりあえず、あなたは中等部の生徒なんだからもう戻りなさい。そろそろチャイム鳴るわよ」



どんなに色気があろうと、彼は高等部の生徒ではない。



ピシャリと言い放ち、伊吹を突き放すような態度の都古に、



「はぁー。都古先輩って真面目なんだから」



あまり気にしていないらしい伊吹は、やれやれと肩を落としながら、



「とにかく。都古先輩が追いかけるほどの価値はないですからね、そのお相手は」



俊のことは諦めるように念を押してから、教室を出ていった。



「えっ。何なの? 今の」



都古は彼が通った教室の扉の方を指差し、



「さぁ?」



風香はわざとらしくとぼけてみせる。

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