第93話

「もう! 右京くんなんてサイテー! 嫌い!」



「それは願ったり叶ったりだな」



そんなやり取りをした二人が観た映画は、結局は海外のコメディー映画で。



映画の後は、川上が気になると言って指を差したイタリアンレストランで遅めのランチを取り、その後はひたすら川上のショッピングに付き合わされ。



「ねぇ、右京くん! どっちが似合うと思う?」



お洒落な雑貨が揃う店のアクセサリーコーナーで、川上が両手に持ったネックレスを交互に胸に当てて右京へと見せる。



「川上の好きな方を買えばいいんじゃないか?」



男の右京から見れば、二つのネックレスはどちらも大して違いがあるようには見えなくて、退屈そうな溜息をついた。



「右京くんが似合うと思ってくれる方を買うの!」



「本当に面倒くさいやつだな、お前。どこがどう違うのか、俺にはさっぱり分からない」



「……もういい!」



プンスカと怒った川上は、右京をその場に残してコスメのコーナーへと移動をする。



女の子向けの商品ばかりが並ぶ店内で右京に居場所などなく、とりあえず川上の後ろについていこうとして――



アクセサリーコーナーの一角で目立つようにディスプレイされている一組のイヤリングに、右京の目が奪われた。

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