1.

第1話

広告代理店に就職して3年、

無我夢中で仕事を覚え、いろんなことに流されていくうちに時間だけが過ぎていく。



「白川先輩!今日は定時ですか?

飲みに行きましょうよ!」


慕ってくれる後輩は可愛いしフリーになったばかりの彼女に付き合ってあげたいけど、今日はダメで…


「ごめんね、」


「えー!!もしかしてデートですか⁈ 」


「ほんとごめんね、次は必ず付き合うから!」



問い詰められる前に荷物をまとめると急いで席を立つ。背後で聞こえる「せんぱーい!」という声に申し訳なく思いながら。



8階から降りたところで警備員さんに頭を下げ、

ビルを出てすぐに見上げた空からは今にも雨が落ちそうになってる。


さっきまで晴れてたのに、



千世ちせ


不意に名前を呼ばれ振り向いた先には今日、約束していた彼が壁にもたれて立っていた。


叶夢かなと、どうしたの?駅の約束じゃ…」


「天気予報、夕方から雨だったから車で来てる、

こっち。」


指し示す方向にある立体駐車場に視線を向け、

傍まで近づくと周りを見渡す。


「連絡くれたら駐車場まで行ったのに、

会社の下で待ってなくても…」


「まずかった?」


「ううん、そんなことないけど…」



けど、チラチラと叶夢を見たあとに私を見る

女の子達の視線にはいつまでたっても慣れない。


叶夢にとってはそれが日常すぎて気にもならないのだろう。

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