12 遠慮

第68話

いつの間にか綾子は26歳、蕗江は36歳になっていた。二人は春先にまた会った。今度は東京の喫茶店で待ち合わせ。


 前回の大阪の寿司屋から、白い空は二曲発表していた。夏野の楽曲と麻矢の楽曲。綾子は両方をすぐに気に入った。相変わらず五人の演奏は調和がとれていてかつ独特だ。


 綾子が新曲を誉めると蕗江は素直に喜んだ。蕗江は、

「私もそろそろ楽曲を考えないといけないけれど、やっぱりレズビアンを題材にしようと思う」

「そうですか……」

 綾子は曖昧に相槌を打った。蕗江は、

「この間、北島さんが勧めた漫画や小説を読んだよ。少し難しかったけれど、面白かった」

「それは良かった」

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