第61話

蕗江は嬉しそうに目を細め、

「北島さんはその曲も好きなんだ。私は本気でそう思っているけれど、理解してくれない女性もいる」

 綾子は、

「理解しない人より理解する人を見てください」

 蕗江は苦笑いして、

「皆からも同じ事を言われてる」

 寿司が運ばれてきた。綾子と蕗江は食べ始めた。


 綾子は久しぶりに寿司を食べた。しかも美味い。酢飯の酸味とワサビの辛さが丁度良く、ネタにも十分な旨味がある。


 蕗江は、

「北島さんの周りにはレズビアンがいるかな」

 綾子は驚いてむせた。蕗江は綾子の背中を擦って、

「変な質問してごめんね」

 落ち着いた綾子は、

「どうしてそんな質問を?」

 蕗江は背中から手を離して、

「私は女性を題材にしてきたけれど、今までレズビアンを題材にした楽曲を作ったことがない」

 確かにその通りである。白い空の楽曲を全て聴いてきた綾子は既に気付いている。けれども不快には感じなかった。下手に当事者面されるより誠実だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る