蕗江はいつもより華があった。綾子は息を飲んだ。綾子も化粧や服装に気を遣っていたが、蕗江には期待していなかった。

　寿司屋は回転式ではない方だ。二人は奥の席に案内された。二人が腰を下ろすと蕗江が、

｢最近の若い人達は恋愛に興味が無いみたいですね｣

　綾子は、

｢いいえ。歩実さんの楽曲は人気ですし｣

　蕗江は、

｢歩実も言ってたけれど、若い人達は実際に恋愛しないで頭の中で恋愛するらしいですね｣

　綾子は気まずそうに、

｢敬語を使わなくて良いです。それに、蕗江さん達が年寄りみたいな言い方です｣

　蕗江は短く笑い、

｢未だに三十過ぎれば行き遅れだと言われるからね。不条理だよ｣

　綾子は、

｢女は閉経してから本番だ、と、『老いた女傑』で叫んでますよね｣

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい