第44話

綾子は白い空の楽屋に入ると、頭を下げながら、

「まさか直接お会い出来るとは思ってなかったので、差し入れは持ってきませんでした」

 鈴音は笑顔で、

「お気になさらず。来てくれて嬉しいです」

 夏野は、

「確か蕗江が押しですよね。蕗江、こっちに来て」

 歩実と打ち合わせしていた蕗江は振り向いて近付いた。麻矢が蕗江に、

「五分ぐらいは時間あるよ、彼女と話したら」

 歩実も、

「アレはもう十分だよ。あとは落ち着くこと」

 蕗江は綾子にドア近くの椅子に座らせて、

「貴方のお陰ですよ。この間の取材は貴方のコメントがきっかけだったみたいです」

 綾子は驚いた。蕗江は、

「私の楽曲を熱心に紹介してくれたのが、彼らの琴線に触れたようです」

 綾子は、

「そうですか」

 と、曖昧に相槌をついた。綾子は自分の影響がいまいち信じられないでいる。

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