第25話

演奏後、ベースを専用の袋にしまっている蕗江に綾子は近付いた。他の四人はファンに囲まれて対応で忙しい。


「新曲、良かったです。励まされました。私は専業主婦に共感しました」

 綾子が誉めると蕗江がやや驚いたように振り向き、

「それは嬉しいですね。結婚されてたのですね」

 綾子は手を顔の前で振り、

「独身です。でも、今日何を食べるかばかり気にしています」

 蕗江は思い出したように真顔になり、

「もしかして岡山で会った運転手さんですか?」

 綾子の顔が明るくなり、

「覚えててくれてましたか」

 蕗江は、

「意外。仕事に励む女ではなく、専業主婦に共感ですか」

 綾子は、

「誰だって身近な事で悩みます。それに専業主婦を応援する歌は癒されます」

 蕗江は微笑み、

「それは良かった」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る