(偽りの『友達』)

第2話

『あなた達は私を受け入れてくれた。妖の血が入っている私でも良いと受け入れてくれたんだ。だけど少し喜び過ぎたのかもしれない。少なくても私に関わる事であなた達が危険にさらされてしまう事を一瞬忘れてしまうくらいには―。』




 様々な出来事が起きた今年の夏休み。その出来事の大半は『桂川 奈瑠(かつらかわ なる)』が引っ越してきた影響か。彼女の中に流れているらしい力により、起きた出来事の大半は異界が関わったものになっていた。だが、内容が内容であっても、それらの出来事を通じて奈瑠との距離が縮まっていくのを実感したからか。奈瑠の同級生である『柳生 宏太(やぎゅう こうた)』や、彼の妹として現在存在している姉の『柳生 優子(やぎゅう ゆうこ)』は日々喜びを実感する。特に優子は自分が元の場所に戻してくれた人物が奈瑠で慕っているからだろう。自分と同じように距離を詰めていく彼の姿に日々喜びを強める。更には彼だけでなく、自分を通して同級生達や『薬師村』の村長の孫である『桜田門 咲(さくらだもん えみ)』とも距離が縮まっていったからだろう。それを密かに感じる事が出来た彼女は益々喜びを強めながら過ごしていた。


 だが、そんな日々に気を緩め過ぎていたのか。はたまた全く想像出来なかったのか。優子は奈瑠という存在が、妖や半妖というものが恐ろしい事を後に思い知らされる事になる。大切な人が自分と同じように『神隠し』に遭った事で…。




 その出来事が起きたのは2学期が始まってまだ半月も経過していない時だった。時期が時期であったからか。学校が始まっても皆は夏休み気分が抜け切れず、授業も1学期の最中以上にゆっくりとした状態。繰り広げられる会話の内容の大半も夏休みに関する事ばかりだった。そしてこの日もクラスの中心核である『稲葉 健介(いなば けんすけ)』が主となって夏休みの事を語っていたのだが…。

「へぇ~…。夏祭りの裏で色々と大変だったんだな。俺は行ってなかったから知らなかったぜ。」

「っていうか、その大変になった理由って…『桂川 奈瑠』さんって人のせいなんだよね?その人って…大丈夫なの?」

「?大丈夫って何がだ?」

夏休み中に体験した不思議な出来事についても話し始めた健介。だが、その話の中には必然的に奈瑠が出てきてしまうからだろう。クラスメイト達は奈瑠が原因である事を何となく察してしまったらしく、思わず戸惑いながら尋ねる。更には不思議そうに尋ね返してくる健介に対し言葉を続けた。

「いや、大変な目に遭っている時って…その『桂川 奈瑠』っていう人がいる時なんでしょう?なら危ないのはその人なんじゃないかなって思って…。」

「そうそう!それもその人って『薬師村』の出入り口の所に住んでいて、あまり他の人と会わないんでしょう?私のお母さんも言っていたよ。『私達は違う集落だからあまり会わないだろうけど、彼女に関わっちゃ駄目だよ。』って。『危ない人かもしれないから。』って。どういう風に危ないかは分からないけど、きっと危ない人なんだよ!だから稲葉君達が大変な事になるのは、その人のせいなんだよ!」

クラスメイトの男の子の言葉に続くように、別の少女もそう答えてくる。そればかりか2人以外の皆も大半が同じ意見なのか。頷いたり気まずそうに目を泳がせたりしてくる。その姿は健介や優子達といった奈瑠と関わった者達にとって、大いに戸惑わせる様子であった。

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