(巡り合い)
第2話
『絶対に見つけてやるんだ!彼女を…大切な姉さんを…!』
ある山中に存在する集落…『薬師(やくし)村』。ここは存在する場所が深い山の中腹だからか。住民は100人以上いるのだが、外との交流はほとんどない。実に閉鎖的な場所だ。だが、閉鎖的であるが故に住民達の繋がりは強く、互いに抱える悩みを相談し合うほどだった。
そんな村に1組の家族が引っ越してきた。両親とその息子という至って普通に見える家族だった事もあり、村人達は親子を受け入れてくれた。特に夫婦の息子が『ある事情』から心を閉ざしかけていた事を知ったからだろう。共働きで何かと忙しくしている両親の代わりに村人達は彼を可愛がるようになる。その効果もあってか。その息子は引っ越してきた時よりも明るい性格に育っていった。
それから約10年の時が過ぎて。月日が経過してもやはり閉鎖的な場所だからか。薬師村の中は相変わらず穏やかな時が流れる。その穏やかさは都会の者ならば一度は憧れてしまうものなのだろう。現に10年の間に50人近くの人々が出入りし、その内の半数は生活もするようになった。
だが、穏やかに賑わっていく村の様子を見つめながらも、10年前にやって来たあの少年…『柳生 宏太(やぎゅう こうた)』の表情は少し浮かない。というのも、いくら多くの人々が村に出入りしても、彼の『会いたい人』…姉の姿は一向に現れないのだ。もっとも宏太が望む人物が今になって姿を現す確率は限りなく低いものなのだが…。
(それでも会いたい…。帰ってきて欲しい…。ずっと待っているんだから…!)
確率が低いと分かっていても、自分の家族であるからだろう。どうしても信じたくなってしまうものだ。特に姉の姿が消えてしまったのは自分が4歳の頃だったのだが、7歳も年上だったからか。当時から両親が何かと忙しく構って貰う事が少なかった宏太にとって、姉は母のような存在でもあったからだろう。周囲の人々や親戚、はたまた両親までもが既に諦めている事は当然知ってはいた。それでも宏太だけは諦めようとはしなかった。『何処かで今も生き続けている』と執着に近い想いを抱え続けていたのだ。そうしなければ日々歩き続ける事が困難だったのだから…。
そんなある日。宏太が今も密かに想いを抱え続けていた姿を見ていたからだろう。村長の孫で副村長の娘でもある同級生の『桜田門 咲(さくらだもん えみ)』は学校終わりに宏太を呼び出す。そして突然の呼び出しもあって戸惑っている宏太を見つめながら咲は口を開いた。
「急に呼び出してごめんなさい。実は…柳生君の願いが叶えられるかもしれないから知らせたくって…!」
「?どういう事…。」
自分を突然呼び出した事だけでなく、咲の言葉が理解出来ず戸惑いを深める宏太。その彼を見つめながら咲は告げたのだ。『人探しに優れた者を知っている人がいる』という事を…。
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