(第1話)

第2話

決められた妖狐と結婚をしろ。さもなくば桂川家の財産は消え失せ没落するだろう―。


 ここはとある町の中にある小さな道。街灯が無く舗装もされていない為、路面は少しでこぼこしている。そして道の脇には木々が植えられているが気味が悪く今にも何かが出そうな雰囲気だ。

 そんな道を1人の女性が歩いていた。肩まで伸びた黒い髪に黒き瞳、そして何処かの会社に勤めているのか白いシャツの上に黒いスーツを着ている。女性は黒い髪をなびかせながら夜道を1人歩いていた。

 よく見ると夜道を歩くその女性を木々からいくつもの影が見ている。明らかに人の姿をしていないその者達はまるで恐れるかのように女性を見つめていた。何故ならその女性は…。

 「おいっ!そこの女!お前、桂川奈々だな?妖達は皆お前を強い者だと噂するが、オレには信じられない。本当に強いのだと言うのならオレを倒してみろ!」

 突然、女性…奈々の前に現れた1匹の妖。牛の顔をし、体は人間で妙に筋肉質、そして手には大きな両刃の斧が握られている(以降、この妖を『牛男』と呼ぶ)。その姿を奈々が見つめていると、牛男は斧を振り上げながら奈々の方に突っ込んできた。奈々はタメ息をつくと手に持っていた鞄を無造作に地面に置く。そして突っ込んでくる牛男をよく見つめると飛び跳ね、牛男の頭を押さえつけながら跳び箱のように超えていった。

一瞬、何が起きたか分からなかった牛男は先程まで奈々が居た所を見渡す。一方、牛男の背後に回る事が出来た奈々は、手首に着けていた髪留めの紐を外すと自らの髪を1つに束ねた。

「ねぇ、牛男。私はここよ。早くかかって来なさい。」

挑発するような奈々の声に牛男はようやく気付き、再び奈々の方へ突っ込んでくる。すると奈々はしゃがみ牛男の懐に入り、力の宿った拳で牛男のあごを一発殴り上げる。

「!?」

あまりの力強い拳に牛男は動揺、斧を握りしめていた手の力が一瞬緩む。その瞬間を見逃さなかった奈々は斧を強引に奪うと牛男に向かって一気に振り下ろした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る