25曲目 【魔法少女になりたかった僕は】

「ねぇ、由春君」

 アイスを食べ終え、帰る準備を始めた由春に多喜は声をかけた。

「どうしたの?プロデューサー」

「次の新曲さ、由春君のさっきの話を参考に書いていいかな」

「えっ?」

 由春は真剣な顔をする多喜を見つめた。

「さっきの様子から見て、由春君の中でこの手の話題ってたぶん嫌な思い出があったのかなって思って。でも、メンバーを信じて本当のことを話して笑っている由春君の光景は私にとっては凄く綺麗だった。だから書きたいんだけど、流石に由春君の意見を聞かずに書くのはって思って」

 多喜の話を聞いて、由春は微笑んだ。

「いいよ!これで僕も過去のトラウマをなくしたいから。それにね」

 由春は変わらず賑やかに帰る準備をするメンバーを見た。

「もう怖くないんだ!魔法少女になりたかった僕を皆は笑顔で聞いてくれたから。それが嬉しかったから、プロデューサーの力でこの思い出を明るくしてほしいな!」

 そう言った由春の笑顔は晴れやかだった。



 白く丸い襟がついたシャツにメンバーカラーのサロペットとメンバーカラーのヘッドドレスを身に着けた七人は個性豊かにアクセサリーや小物を使って可愛らしくそれらを着こなしていた。真ん中に立つ一際可愛らしい少年、由春はカメラを見て全力で微笑んだ。

「キラキラハピハピイリュージョン!きらめけ、スターラビット!皆が僕らに夢中になぁれ!」

由春が魔法を唱えるように言うと同時に曲が流れ、メンバーは踊り出し、画面には曲名が可愛らしい字体で現れ、見ていたファンはその可愛らしい世界に引き込まれていった。


【魔法少女になりたかった僕は】


小さい頃の夢 語り合った日々

僕の夢は いつだって

誤魔化しがコーティングされていた

周りの反応 怖かった僕は

本当の夢 言えなくて

心の中 留めてた


魔法少女になりたかった僕は

小さな枝しか持てなくて

こっそり隠れて練習してた

憧れの世界の呪文

ねぇ、お願いだから

一瞬でも輝いて


憧れていたもの 口に出してた頃

僕の口は いつのまにか

作った憧れ 言っていた

正直なこと 言えずのままで

心の中 しまいこんで

ひとりぼっち 楽しんだ


魔法少女になりたかった僕は

話せなかった想像を

こっそり隠れて描いていた

憧れの世界の友達

あぁ、寂しいんだよ

ひとりぼっちの夢なんてさ


ねぇ、閉じ込めないでいて

案外さ思っているより

世界は窮屈じゃないみたいだよ



魔法少女になりたかった僕を

味方してくれた多様性

魔法少女ではないけれど

それでも叶った僕の夢

さぁ、前を向こう

アイドルだって魔法なんだ


君が僕の魔法にかかるように

キラキラな衣装で唱えるよ

だからこれからも

目、離さないでね


[コメント欄]

《よしはるくんっぽくてかわいい》

《皆、衣装似合いすぎ》

《ヘッドドレスつけさせた人天才説》

《あゆむくんキレキレでかっこいい》

《よしくん!!!永遠にファンだよーーー!!!!!》

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